5-137 ハルナとフウカ8





大精霊たちはそこから人間と接触を行い、多くの人間が精霊使いとなれるように協力を進めていった。




「そんなことが……あったんですね」



ハルナはガブリエルの話に、それ以上の言葉が出てこなかった。

きっとこれはエレーナも知らない話だと、ハルナはそう思った。

フウカでさえ、その話を聞いてからキョトンとした表情のまま変わらなかった。



さらに言えば、これはこの世界の人たちに話してしまっても良いものかという思いが巡った。

だが、あえて言わなくても良いのでは?という判断にすぐに至った。

特に東の王国はモイスと深い繋がりがあり、精霊と契約をするための森も整備されている。

大精霊たちが協力をしたというのは、まさしくステイビルたちの王国の認識で間違いない。



いまさら、その仕組みなどを明かしたところで、エレーナたちにデメリットはあってもメリットはない。

そのため、ハルナはこのことを自分の胸の中に秘めておくことに決めた。




「……それで、これからどうすればいいんでしょうか?」



『正直に申し上げて……ハルナ様の疑問にお応えできる答えは持ち合わせておりません……ですが、この世界が崩壊に向かって進んでいることは確かです。そのためにまずは、オスロガルムかハルナ様のお知り合いのサヤという者を探されてはいかがでしょうか』







「え……えぇ。そうですね……」



やはりラファエルのこの態度に対して、ハルナはまだ慣れない。

一日も経たないうちに、立場が逆転してしまっていた。


世界の最上位の存在が、ハルナの秘書のような対応を見せる。

それは今では友人となった――ハルナは少なくてもそう思っている――マーホンとの雰囲気とも異なっている。




(こんな姿をエレーナが見たら……どう思うかな?)



エレーナの困惑する顔を思い浮かべると、少しその状況を見てみたいという思いもかすかに生まれてきた。

そういう楽しみがなければ、ハルナもこの状況に耐えられそうになかった。


「それじゃ、探しに行きましょうか……!」



ハルナは自分の顔を両手の掌で二回ほど叩き、自分がやるべきことに気合を入れた。



『……お待ちください』



早速外に出ようとしたハルナを呼び留めたのは、水の大竜神のモイスだった。



「なんですか?ど、どうしました?」



何か早とちりしてしまったのではと、ハルナは少し焦りながら呼びかけに応えた。



『移動は、私の背中をお使いください。歩いて探すよりも空からの方が見通しもよいでしょう。それにサヤという者は、なぜかハルナ様を探しておった様子……相手もハルナ様の姿を探しやすいと思いますが。それに私の能力もお役に立てることができるでしょう』




「そうですね!それじゃあ、お願いします!」



『お気を付けください、ハルナ様。何かありましたお呼びいただければ駆けつけます』



「はい!……では、行ってきます!!」




モイスは身をかがめると、ハルナの三倍くらいの大きさに形を変える。

ハルナがモイスの首の付け根辺りの上に跨ると、両羽を二、三度はばたかせた。




『それでは行きますぞ!!』



「はい……きゃあっ!」




この世界で、初めて生き物に上に乗って宙に浮かんだことに一瞬身体が強張った。

だが、それもじきに慣れてその感覚を楽しめるようになってきた。

モイスはこの空間の中を数回上空で旋回し、背後の存在が慣れたことを確認してこの空間の中から離脱した。






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