5-129 サヤの目的






「それで……これからどうされるのですか?お母様……」



「そうだねぇ……もう一回チャンスを作って……何としてでもあいつをぶっ殺さないと」





ヴェスティーユはヴァスティーユとは違い、今までサヤの言葉に対して疑問を持ったりそれに対して疑問を持つことはなかった。

それは、何かあった場合にはヴァスティーユが聞いてくれるだろうし、自分よりも姉の方が賢いため任せておいた方が失敗がなく、サヤに起こられる心配もないという気持ちがあった。




「お母様……どうしてそこまで、あのオスロガルムのことを?何か……その、酷いことでもやられたのですか?」



「ん?……珍しいね、お前がそんなこと言いだすなんてさ」





その裏で、サヤはヴァスティーユのショックが少し落ち着いたのだと思いその質問に答えることにした。




「別にあいつに恨みなんかないよ……ただ、アイツを殺さないと世界の崩壊が起きないんだ」



「世界崩壊。お姉ちゃん……いえ、ヴァスティーユはそれを止めたいと言っておりました。私がオスロガルムに捕まった時、そのように伝えてお母様をオスロガルムのところへ呼び出すことになっていました」



「お前も聞いただろ?ヴァスティーユの声をさ。だからこそ拘束していたものを解き、お前はオスロガルムを抑えてくれたんじゃないのかい?」





そう、ヴェスティーユはあの時確かにヴァスティーユの声が聞こえた。

『お母様のためにオスロガルムを抑えなさい』と。



「ヴァスティーユはお母様を裏切ったのでは……なかったのですか?」





今まで床を見て話していたヴェスティーユは、顔上げてサヤの顔を見て質問した。

それに応えるために、サヤは膝を折ってヴァスティーユと同じ目の高さに合わせてその質問に答えた。




「ヴァスティーユはね……裏切ってはいないよ。あたしがオスロガルムを倒すことに協力してくれたんだ……あんたを人質にしてしまったことは悪いと思っていたみたいだけど、あたしも絶対に助けるって約束したんだ」




ヴェスティーユの中で心の重りが一つ取れた気がした、自分を囮にしてサヤを裏切ることを企んでいた姉にほんの少し不信感を抱いていた。

今の話を聞いて、自分を解放してくれた時の姉の対応などが間違っていなかったことにヴェスティーユの気持ちが軽くなった。



ヴァスティーユもヴェスティーユも、本当はサヤのことが好きだった。

冷たい態度を取ったとしても、あの頃に比べたら力も与えてくれて名前も呼んでくれる。

そして、姉が頼んでくれたことを承諾し、自分を生み出してくれたことにも感謝していた。

こうして、長い間大好きな姉と一緒に過ごすことができていたのだから。



気持ちが軽くなった反動で、ヴェスティーユの胸の中に新たな痛みが襲い掛かる。

疑ったことに対する謝罪をもう、ヴァスティーユに対してすることは適わないからだ。

そこで、疑問に思っていたことを再びサヤにぶつけてみた。





「でも、オスロガルムを倒すと世界が消えてしまうのではないのですか?そうなると、私たちはどうなるのですか?」



「おや?……そうか、お前には話してなかったね。何でアタシが、この世界を崩壊させようとしているのかを……」





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