5-122 秘密の場所で4










今までの話を聞いたのは、ハルナがそう望んだためだったことを思い出した。

聞いたからには、もうラファエルに頼んで記憶から完全に消してしまわない限り忘れることは出来ない。




『……ハルナさん?どうかしましたか?』



「い、いえ。何でもないです……大丈夫です!?」





ラファエルの声に、ハルナは再び現実に意識を戻した。





『そうですか……何もなければよいのです。……ガブリエルの説明の通り、私たちはこの世界を見守り続けてきました』



『だから、元々一つの力だった能力を分けていたのです。ですが、今回は逆のことをハルナさんに施そうとしているんです』



「でも……私なんか……」



『ハルナさんは、実は我々と同じくらいの力を持っているのです。ですから、理論上はできないはずはないのです』





ハルナはサナの話を思い出した。

エレーナたちがモイスから加護を受けた際に聞いた話では、ハルナの身体は既に生命力が拡大することはないという内容の話だった。

きっと今告げられたラファエルの話からすると、ハルナのやっていたゲームに置き換えて言うとカンストしているのだろうとハルナは考えた。

そのことをハルナはラファエルに伝えると、ハルナのその考えに賛同した。



『その通りです……ハルナさん。あなたは元々、この世界の人々よりも大きな器をもってこの世界にやってきたようですね』



ラファエルはすでに、ハルナの”中”のことはフウカを通じて調べていたようだった。

だからこそハルナは今、ステイビルたちと離れてこの場所にいた。



『ハルナさん……あなたの能力としては、充分私たちと同じ能力を持っているのです。ですからこそ、あのオスロガルムやサヤという者に対抗できる可能性があるのは……あなただけなのです』



自分の評価が高いことが、ハルナにとってはプレッシャーとなり覆いかぶさってくる。




「で、でも……」



ハルナの否定的な言葉が出掛かった途中で、ラファエルはその言葉を遮るように言葉を発した。




『それで……フウカ』




「――は、はいぃっ!?」



フウカはハルナとラファエルたちが難しい話をうつろな目で聞いていた。

だが、突然先生と呼ばれる存在に声をかけられ、その眠気はどこかに吹き飛んでいった。





『よくお聞きなさい、フウカ。あなたはこれまでもよく頑張ってきました。時にはハルナを庇ったりと、その行いは他の精霊に見ない立派な行いですよ』


「えへ……えへへへ……」






褒められたフウカは、嬉しさ半分恥ずかしさ半分で、ハルナの肩の上でもじもじしながら先生の言葉を噛みしめていた。




『ですが、あなたにはもう少し頑張っていただきたいのです。いまハルナのあなたの間にある元素をやり取りをする管が、小さいために大きな元素の量を送り込むことができません』




褒められた直後であったが、フウカの悪い点を指摘されフウカは先ほどの照れ笑いの笑顔が表情から消えていた。





『ですから、もう少しだけあなたには頑張っていただきたいと思っています……いえ。これはハルナと繋がったあなた氏にかできないことなのですよ』





落ち込みかけたフウカは、次の言葉ですくわれた気がした。

大好きなハルナと契約した自分しかできないこと。

そう言われて、フウカのやる気はさらに上がっていった。



その様子を見たラファエルは満足そうに頷き、次の手をハルナに告げる。




『では、今度は先ほどと送り込む量を変えつつ、ガブリエルにその力を安定させながら最大限の元素を送り込んでいきます……いいですね?』





こうしてハルナとフウカは、ラファエルの力によって濃度の高い元素の光の繭に包まれていった。




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