5-121 秘密の場所で3
そこからラファエルたちは、この世界の生き物たちでどのような生物が精霊の力を扱えるのかを調査することにした。
そのことが、この世界を救うための力になるのではないかとラファエルは考えた。
その当時では、精霊の力を扱えるものが人間という種族にだけ限られていたが、この世界に存在する他の種族にもその力を扱えるものがいるかどうかを調べていくことにした。
しかし、広い世界の中で四人だけで調査していくには、思いの他手間がかかった。
ある一部の区域の生物を調べていても、この時代は生物たちの進化やその数が増えていく数が速度が加速度的に進んでいった
そのため、以前調べた場所の生態環境が刻一刻と変わっていき、調査した内容がすぐに古くなっていった。
そこで他の大精霊から、自分たちと同じように仲間を増やすことは出来ないかという案が出た。
ラファエルはその意見に賛成し、新しい協力者を生み出すことにした。
同じ人型ではなく、できれば他の形状をしたものにしたいと考えていた。
そこでラファエルは、頭の中にサヤの記憶の中にあったある生き物の存在を思い出した。
竜と呼ばれる、その世界では架空の生物を参考にした。
竜は四体、各属性ごとに創造することに成功し、その成果はラファエルたちが意図しないところで見られた。
亜人や人間の中で上下関係が生れはじめ、中でも精霊の力を授かった者が自らの欲望を叶えるために、同族や他種族を殺める者たちが出始めていた。
それらを抑制することに、竜の姿は効果があった。
今まで、この世界の中には見たことのない異形の存在に怯えることになり、その行動は抑制されることになった。
そうして、いつからか大精霊と大竜神はこの世界を統治するものとして認識され続けることになった。
「そうだった……んですね」
ハルナはガブリエルからの説明に対して、理解はしたつもりだったがいまひとつスッキリとしていなかった。
それは、なぜそんなことを自分に話しているのか……という思いから来ていた。
ハルナは確かに、この世界でエレーナやステイビルたちと同じ生活をしてきた。
だけどその心の奥には、いつも喉の奥に引っ掛かった魚の骨のような思いがあった。
『――私は、この世界の本当の人間ではない』
エレーナたちは優しいため、そんなことを思わなくてもいいと何度もハルナを説得してくれた。
他の世界から来たことは事実であり、それがなかったことになどできるはずもなかった。
この話はこの世界に生きる人たちが聞いてもいい話かどうかハルナにはわからなかった。
この世界を創ってきたと信じていた大きな存在たちが、いわば自分の都合でその存在を増やしていったことの事実を知ったとき、その信仰心などがどのような形で崩壊していくのか想像したくはなかった。
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