5-120 秘密の場所で2
「あの、ラファエル様……ちょっとお聞きしていいですか?」
『あら。改まって……この私に何をお聞きになりたいのですか?』
ハルナは隣にいる見慣れないミカエルに一度目をやり、もう一度ラファエルに視線を戻した。
視線を戻しても、ハルナからの質問を待ち受ける優しそうな表情は変わっていなかった。
「どうして……どうして、ミカエル様はラファエル様に……その……」
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『どうして私が、偉そうにしているのか……そういうことですね?お聞きにないたいことは』
「あ、あの!偉そうっていうか……エレーナに聞いた時には、大精霊様とかモイス様やシュナイド様の大竜神様は、対等と聞いていましたので……その」
『……それについては、私からご説明します』
そう話を割り込んできたのは、この場に現れたガブリエルだった。
ガブリエルの説明では、単純で簡単なだった。
それはそれらのすべてがラファエルから生まれたとのことだった。
この世界に元素を扱える存在はラファエルしかいなかった頃の話で、元々ラファエルは、全ての元素を扱うことができた。
だが、ある時からそのことに疑問を抱くことになる。
それは、サヤの中にある未来を見てしまったときから。
自分の力で、この恐るべき未来を変えようとラファエルは自身の能力に磨きをかけていった。
しかしラファエルはその途中で能力の開発に行き詰ってしまう。
各属性に対して単体の属性でのの能力は発揮できるが、それを合わせて使うことはどうしてもできなかった。
そこで考えたのが、分身を造りその者たちと一緒に合わせて能力を使うという手だった。
そして、その方法は成功した。
それぞれの元素の力を合わせて、攻撃力や防御力を向上させることができた。
しかも、ラファエルがこれまでに集めてきた知識や技術がそのまま分身に引き継がれているため、容易にその効果を発揮することができた。
このことにより、ラファエルが扱える元素は風だけとなった。
だが能力の連携だけでなく、それ以上に嬉しいことがあった。
同じ存在ができたことは、ラファエルにとっては何よりも嬉しい出来事だった。
それまでの間、ラファエルもずっと一人切りでこの世界に存在していた。
他の生き物とも交流することはなく、話し相手もいない時間が続いていた。
しかし、サヤという人間がこの世界に訪れてからその環境が一変した。
全ては、あの時あの記憶を見てから……
ラファエルはガブリエルの説明を聞きながら、そんなことを思い出していた。
いまとなってはこの状況の方が長いため、今となってはもうあの時の感情も思い出し辛いくらいだった。
この分身たちは当初、ラファエルを上位の存在と崇めていた。
ラファエルは、そのことを鬱陶しく思い止めるように言っていたが、分身たちはそれを止めることはしなかった。
そのことが改善されたのは、この世界に人間の精霊使いが誕生したためだった。
いつしか人間はラファエルたちのことを、「大きな精霊」……”大精霊”と呼び始めた。
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