5-99 魔神、再び
ステイビルはモイスの連絡を受け、グラキース山のふもとの村にも伝令を走らせた。
それと同時に、王都、各町や小さな村や集落を含め警戒するように王に伝えるように命令をした。
その伝令もあり、ジェフリーの集落にも数名ほど騎士、警備兵、精霊使いが配置された。
おおよその人員は四つの町に充てられ、集落や村にはほんのわずかな人員しか充てられていない。
その理由は、その場所を守るというよりも、住民の命を守るために逃がす時間を稼ぐ程度の配置しかされなかった。
この結果は誰もが納得しているもので、不満など口にする者はいなかった。
自分たちの命を優先して守ってくれることを約束してくれただけでも、小さな規模の住人たちは感謝をしていた。
ジェフリーの通達により、ステイビル達たちが滞在している集落も、魔物に襲われた際の回避行動について訓練が始まった。
そして人々は自分と家族の命を守るための行動がとれるようになったころ、その時は訪れた。
収穫作業が多忙を極めるころ、急造した物見やぐらに設置された鐘の音が集落に鳴り響いた。
「ま……魔物だ!魔物が攻めてきた!か、数は……とにかくたくさんだ!!!魔物が攻めてきたぞー!!!」
一定のリズムで打ち鳴らされた鐘の音の合間に響く声に警備していた男の声が響き渡る。
魔物を確認したらその規模を告げ、その規模によって住民の回避行動が決められていた。
今回の警報は、訓練をした中でも一番最悪となる警告が集落の中に鳴り響いた。
作業をしていた者たちは、荷物をその場において決められた方角へ瞬時に移動を開始した。
一部の者たちだけ武器になるような道具を手にし、人目に付きやすい場所に集まってきた。
これは襲撃してきた魔物に対し抵抗をするためでもあるが、魔物たちの意識をこの場所に向けさせて他の者たちを無事に逃がすという意味もあった。
その場所に王都から派遣された者たちも集まり、魔物たちを迎え撃つ準備を整える。
住民たちはパニックに陥ることもなく、おおよそ決められたとおりの行動をとり終えることができた。
ステイビルたちも、この場にいる場合には戦力を貸すことになっていたためこの場に駆けつけた。
「状況は!?」
「はい!目標はまだ遠くに見えますが、こちらに向かってきているため、この地が目的ではないかと思われます!」
「そうか……よし。お前たちは後ろに下がれ!警備兵たちは、左右に展開しろ!」
「「はっ!!」」
初めにステイビルに声をかけられた住民は、隠れた者たちを守るために後を追っていった。
訓練を受けた兵たちは指示に従い左右に広がり、次第にその姿がはっきりとしてきた魔物の影を迎え撃つ準備をする。
魔物たちの影はこの場にいる誰もが予測を裏切ることなく、ステイビルたちの元に向かって高度を下げていった。
少し予測と違ったことは、逃げていった住民を追従しなかったこと。
それと、この場所魔神が姿を見せていたことだった。
オスロガルムは上空に魔物を待機させて、一人だけゆっくりと地上に降り立った。
ステイビルたちは、その予測しない行動に最上級の注意を払いながら、無言でその状況を見守っていた。
『お前……あの時の……』
オスロガルムは、ステイビルの姿を見つけ目を細める。
エレーナたちは緊張するが、まだ何が起こるかわからないため攻撃はしかけなかった。
そして、オスロガルムは再びステイビルに声をかけた。
『ふむ……丁度良い。お前に聞きたいことがある』
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