3-14 詰問






ここは食堂の中。

その意図を感じるのが不明なくらい、不規則かつ様々な文化が見事なまでにバラバラな配置の部屋。


テーブルを端に寄せ、部屋の一番奥には今朝到着したばかりのステイビルがやや高い位置に座っている。


その前には、王子とこれから旅を共にする精霊使いたちに見守られる状態でジェフリーが座っている。




「まず、ジェフリーよ。お前は昨夜、ハルナの部屋に強制的に入り込もうとしてソフィーナに阻止をされた。……間違いないか?」




「はい……間違いございません」





「その理由を聞こうか。お前は、なぜハルナの部屋に入ろうとしたのだ」



ジェフリーは下にうつむいたまま、沈黙を続ける。



「言えないのか?ならば、ソフィーネにその時の様子を話してもらおう」




そう言われたソフィーネが一度ステイビルに対してお辞儀をし、並んでいた場所から一歩前に踏み出した。



「昨夜その男は、休憩しておりましたハルナ様の部屋扉を叩きつけてハルナ様を呼び出そうとしていました。わたくしが代わりに対応し、ドアを開け事情を説明しお引き取り願った際に、強引に部屋の中に入ろうとしていたため阻止をしました」



そこまでの段階で、ステイビルはジェフリーの様子に視線を向ける。

だが、ジェフリーは依然下を向いたまま動かなかった。



ステイビルはソフィーネに向かって頷き、その続きを促した。



「するとその男は、別の男を呼び出してわたくしを排除しようとしましたので、抵抗をしハルナ様の安全を守ることを優先しました」





「まぁ、そんな男たちに精霊使いのハルナがどうかされる筈もないだろうが……よく守ってくれた、礼を言うぞソフィーネ」



その言葉を聞き、ソフィーネは一歩下がり列の中に戻った。






「調べによると、お前"ハルナがお前に好意を持っている"という噂をながさせたようだな」



度重なるステイビルからの問いかけにも、全く何の反応も示さなかった。





「まぁ、女性の心を動かす方法としてそういう手法もあるだろうな。だが、今回は仕掛ける条件が不足しすぎて……っと余計なことだったな」



ステイビルは話が脱線しそうになるところを、ソフィーネの視線が背後から突き刺さるのを察し咳払いをしてごまかした。




ステイビルも年頃ではあるので、女性をいかにして振り向かせるかといった話は嫌いではないし、自分なりの考えも持っていた。

だが、本来ステイビルがジェフリーに話したいことはこの件とは全く別の話だった。







「さ、さて。本題に移ろう……この状態のお前には辛いかもしれぬが」





ステイビルは、ジェフリーに顔を上げさせた。

そして、国を賄う者の顔つきに変えてジェフリーに話しかける。



「お前はこの施設を作った時に、不正を働いていたと報告が入っている。そして調べた結果、国としても不正が認められると判断した……それについて、何か言いたいことはあるか?」




ジェフリーは顔は上げたまま、目線を下に下げる。

一度だけ口を開いたが、股閉じてしまった。





「……ふん、またダンマリか?」




「……しは」





「ん?」





微かにジェフリーから声のような音が聞こえ、ステイビルは再度聞き直した。




「私は幼い頃から、ずっといじめられておりました。誰にも相談できず誰にも助けてもらえませんでした……実の親にもです」





「――ふむ、それで?」




ようやく語り始めたジェフリーに対し、ステイビルはその流れを遮らないようにさらに発言を促した。





「ずっと”どうすれば生きていけるか”、”どうすれば勝つことが出来るのか”……そんなことばかり考えていました」













【コリエンナル家】





ある特定の商品を売買していた訳でもなく、金銭だけを扱いその手数料などで生活をしていた。

その利用者は王国や企業、個人にまで手広く利用されていた。




偉い人から信用ならない様な人物まで、毎日大勢の人が自分の家を出入りする。

そしてジェフリーは、自分の父親に頭を下げて頼み込む姿を見て育った。



その様子を見続けて育ってしまったため、ジェフリーは周囲に高圧的な態度で接するようになった。

当然友達は出来ず、誰かと一緒に遊ぶことが出来なかった。




幼少期には、相手の家の社会的地位がどちらが上だとかは意識されない。

そのうちある集団からジェフリーの態度が気に入らず、目を付けられることになった。

ベスが、その集団のトップだった。



ベスは金品などを要求はしなかった、ただジェフリーの態度が気に入らなかった。

実力が無い者が、どうしてそんなに態度を取れるのか。


ベスは、ジェフリーに実力相応のふるまいを望んいた。

だが、その望みが叶うことはなかった。




ある時、ジェフリーは気付いた。

自分には、お金という”武器”があるということを。




家族からノウハウを教わり、お金を回していく様々な手段を覚えていった。




そして、自分の実力を試す時が来た。




仕込んでいた情報屋から、ベスの家が同業者から借金で苦しんでいると聞いた。

その借金のカタとして、ベスの妹の身が危なくなっていると知った。


ベスは、妹を大切にしていた。

その分、このような状況はベスにとっては我慢ならない状況だろう。



調べていくうちに、ベスが借金を助けてくれる人物を探していることを知る。



ここがチャンスだと感じ、さっそく行動を起こす。

ジェフリーは、ベスの家の負債を全て引き受けた。













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