3-4 隔離





チーム分けの発表が終わり、それぞれのチームは別室に別れこれからの話し合いが行われた。





「えっと……改めて、宜しくお願いします。ステイビル王子……」






改まって畏まると、ぎこちない挨拶になってしまうエレーナ。





「ちょっと、改まるとなんだか……変ですよね」






今までは、皆が一緒に一つの目標に向かって考動していた。

そのため数の面でも安心感もあったが、赤白とハッキリ分けられてしまいそれぞれが競い合うことになり戸惑いもあった。





「……何をいまさら。こうなることは、王選(ここに)来るときに判っていただろうが」





ハルナたちは、ステイビルのいまの一言で気が引き締まった。

ここには、馴れ合いに来ているわけではないのだと……


むしろ、王選参加者のハルナたちにとってはこれが本題なのだった。






「「すみません、ステイビル王子……」」





エレーナとハルナは、自覚が足りないかったことをステイビルに詫びた。






「うむ。自分たちの仕事を思い出してくれたならば、それでいい。それとな、今後はもう”王子”はいらん、ステイビルだけでよい」



「はい、王子……あ!」



「まぁよい。じきに慣れていくだろう……」



「それでは、付き添いの中から誰が付いて行くか決めませんと」





そう話を割り込んできたのは、オリーブだった。


今回、同行できる精霊使いは”王選に選ばれた四名のみ”とされているため、必然的にオリーブは外されてしまう形になる。

本当は一緒について行きたかったのだが、こればかりは王国側で決定されたことなので仕方がなかった。





「となると、エレーナはアルベルトさんで決定よね?」



「でも、アルは騎士団に入ったんじゃないの?入ってすぐなのに別行動とってもいいものなの?」





エレーナからの問いかけに、アルベルトは首を横に振る。

アルベルトでさえ、入団の許可は下りているが騎士団の決まりなどは全く分かっていない。






「……それについては、問題はない。何よりも王選が最優先されるからな。まして、アルベルトはまだ入団したばかりで具体的な配置も行われていない。今の騎士団にとっても、何の影響もないだろう」






そう言われて、エレーナは嬉しいような困ったような複雑な気持ちが、心の中の色を濁していく。






「……そういうハルナは、どうするの?メイヤさんが付いてくるの?」



「いいえ、私は他の仕事がありますので」



「「――えぇ!?」」






ハルナとエレーナは驚きの声をあげる。



メイヤはエレーナの言葉に片手を挙げて、きっぱりと断った。





「うむ、そうだろうな。そろそろ戻らないと、マイヤが大変なんじゃないか?」



「マイヤなら平気でしょうが、後からいろいろと言われるのも嫌ですしそろそろ本来の仕事に戻らせて頂きます」






その言葉に、ステイビルは納得した様子だった。



ハルナは恐る恐るもう一人、付き添ってくれている人物に確認した。









「あの、もしかして……ソフィーネさんも……」





ソフィーネはこの中でひとり、今までの話しは自分とは関係ないといった雰囲気で手にした紅茶を口に含んでいた。


口の中で紅茶の味と香りを楽しんで、カップをもう片方の手で持つ皿の上に置いて目を閉じた。





「私は、ティアド様の指示でハルナ様のことをお願いされております。ですので、その命令に逆らうようなことはいたしません」





ソフィーネは片目を開けて、チラッとメイヤの顔を見る。

メイヤもその視線には気付いて入るが、知らない振りを取り続けていた。






「有難うございます、ソフィーネさん。とっても心強いです!」





ソフィーネはハルナの言葉に、安心させるような笑顔で返した。






「では、メンバーは決まったな。とにかく今日はこれで、一旦解散しよう。また明日以降、これからのことを相談していきたい……これからよろしく頼む。お前たちが頼りなのだ」



「「はい!」」





この場は解散し、エレーナ達は施設に帰ることにした。





エントランスに馬車が到着し、ハルナとエレーナたちは建物の中に入っていく。


ハルナは、少しいつもと違う違和感を感じた。

それは、いつも迎えに来てくれる従者が誰もいなかった。






「どうしたのかなぁ?」



「何かあったのかしら……」





と、その時奥からマーホンがハルナを迎えに来た。





「あ、ハルナ様おかえりなさいませ!」



「マーホンさん、ただいま。それより、なにか雰囲気が違うのですが何かあったのですか?」



「ちょっとばかりこの施設内の仕様の変更がありまして、その作業で忙しかったもので」



「そうなんですね。もう、クリエさんたちは戻ってきたのですか?」



「え、えぇ……戻ってはいますが……そのぉ」





マーホンの歯切れの悪さに、ハルナは悪い予感がした。






「クリエさんに何かったのですか?それとも、ルーシーさん!?」



「あ、ハルナ様!?」





ハルナは焦ってマーホンの呼び止めも聞かず、クリエたちの元に急いで向かった。



だが、そこには今まで通っていた廊下が消えていた。

いや、壁ができて通れなくなっていた。





「こ……これは!?」





ハルナはその塞がれた通路の壁を触りながら、何とか通れないか探してみる。

が、完全に通路は塞がれていた。





ハルナの後を遅れて、マーホンとエレーナが追いついた。





「マーホンさん、これはどいうことですか!?」





マーホンは、ハルナから強い口調で問い詰められて申し訳なそうに答えた。





「やはりそのご様子ですとご存じないみたいですね……」



「どういうことでしょうか?」





エレーナが落ち着いて問いただした。





「本日、王宮からハイレイン様経由で伝達がありまして、今日から二組の王選の精霊使いは接触させてはならない……と」








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