3-3 組分け




「ハルナ様。王宮精霊使いへの昇任、おめでとうございます!」



「「ハルナ様、おめでとうございます!」」






マーホンや他の従者の方々が、ハルナの成果を祝ってくれた。






「あ……ありがとうございます」





しかし、ハルナはそんなに大したことをしたつもりはなかった。

ただ、訓練と称するゲームを楽しんでいただけだったのだから。



マーホンからしてみれば精霊使いになり、しかも一般の人が目指せるそのクラスの最高職に就けたのだ。

更に言えば、王選の精霊使いに選ばれているのだから、これ以上ないほどの憧れの人物となった。




この状況をどうするべきか、ハルナはエレーナたちに相談してみた。




エレーナは困るハルナを見て楽しんでおり、まともなアドバイスがもらえなかった。


クリエは、マーホンとハルナが親しくしているのが面白くないようで、この話をするとクリエの機嫌が悪くなった。


ルーシーは、何故か自分が戸惑いながら「わ……私、”そっち”の世界はどうも苦手で……」と、ものすごい勘違いをされた。



最後にメイヤとソフィーネにも相談したが「ご自分でお考え下さい」と、これもまたハルナを助けてくれる答えは返ってこなかった。






そこからハルナは、なるべく一定の距離を置いて接するようにした。

受けとる好意も、ある一定の基準を越えない程度にしようと決めたのだった。







そんなことで悩んでいると、数日間があっという間過ぎてしまった。

そして、いよいよ王宮から王選に関する招集の知らせが届いた。


その指定された通り、四人とその付き添いは玉座の間に集まり再び王を前にした。





「この数週間、ゆっくり休めたか?聞いたところによると、鍛錬に励んでいたようだが……」



グレイネスは両端にいる、ヴェクターとシエラの顔を交互に見渡した。






「王よ。これしきのこと、全く問題ありません」





そう代表して答えたのは、ルーシーだった。





「そうか、ならばこれ以上何も申すまい。……では、本題に入る。ヴェクター」



名前を呼ばれた騎士団長は一歩前に歩み出て、王の後ろにいる王子に向かって告げた。





「これより、両王子も該当者となりますので前の精霊使いたちとお並びいただけますでしょうか」




そう言われ、ステイビルとキャスメルはハルナたちの前に用意された席に腰かけた。




「それでは、今回の王選についての説明を致します。まず最初にご存じとは思いますが、今回の趣旨について。王選は次期国王を決定するために行われ、過去の通りに従い大精霊様と大竜神それぞれ四つの加護を早く受けた者が次期国王と認められます」




それについては、この場にいる全員が共通の認識であることを確認した。




「今回、同一属性の者がいないためチームの所属している属性のいずれかから加護を受けに行くようにする。属性やどちらの神から向かうのかは、それぞれのチームで判断してかまわない」



いつも人材の状況に応じて、細かなルールは毎回変えられている。

今回はまた、他のルールが追加されることになった。



「さらに今回は、各精霊使いに対して一名ずつ付き添いの同行を許可する。これは、近年怪しいものが増えてきているための措置で、少しでも危険度を下げるための措置である」



怪しいもの……これはヴェスティーユなどのことを指していた。

これまでの報告から、特にハルナと遭遇する可能性が高いと判断し、身を守る措置として人員の追加が許可された。





「だが、その者は精霊使い以外の者とする」



これは今までも王子一名に対し、精霊使い二名で王選を行ってきたためである。

付き添いもあくまで補助として考えた場合、別な精霊使いをチームに加えることは許されなかった。





「……それでは、ここまでで何か質問はあるか?」





グレイネス王が、一旦ここまでの状況を確認する。

その問いに対し、ハルナたちは首を振ることもせずただ静かに時が過ぎるのを待つ。

その行動が、何も質問がないという合図になる。




「よろしい。では、次にシエラよ、説明しなさい」




ヴェクターが後ろにさがり、その対側にいたシエラが前に歩み出る。




「それでは、次にチームを発表します……」




シエラはそう話を切り出すと、それに反応したのはステイビルだった。




「ちょっと待て。チームは今までは、こちらが決めて良いと聞いているが、決まっているのか!?」





シエラはこうなることを予測していたかのように、落ち着いてステイビルの発言に対して返した。





「はい。今回は王国側で、既に決定しました。これについては、国王様も王女様もご承認いただいており決定事項でございます」





ステイビルは父親である国王の顔を見るが、グレイネスは微動だにしない。

これ以上抗議しても無駄と判断し、ステイビルは話しを中断させてしまったことを詫びて腰を下ろした。





「それでは、引き続きチームの発表を行います……」





一瞬この玉座の間に、無音の時間が訪れる。

ほんの数秒が、この場にいる者たちはとてつもなく長く感じていた。




「まず、ステイビル様には……」



ステイビルが膝の上に置いていた手を強く握る。






「ステイビル様には、水の精霊使い”エレーナ・フリーマス”と風の精霊使い”ハルナ・コノハナ”の両名が。次にキャスメル様には、火の精霊使い”ルーシー・セイラム”と土の精霊使い”クリエ・ポートフ”の両名の組み合わせとします」







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