2-40 パレード2
「……あー。まずいわ、ハルナ」
「エレーナ、どうしたの」
「私、緊張してきちゃった……」
ハルナはオリーブと目を合わせて、アルベルトの方へ向きフォローをお願いする。
アルベルトは、”え!?”という表情を見せるが落ちついて対応する。
「ゴホン……大丈夫ですよ、エレーナ様。自分が見られていると勘違いするから緊張するんですよ」
(なんのフォローよ、それ!?)
ハルナとオリーブは心の中で叫んだ。
エレーナを見ると、顔を真っ赤にしてプルプルと震えている。
――あ
そう思った瞬間
「アルのバカ!!!!!」
ルーシーとクリエもその声に驚いて、こちらを見る。
あちらのでヤレヤレとした顔をするのは、ソルベティだけだった。
「……ちょっと、エレーナ。なんて大きな声を出してるの、みっともない!?」
ハルナは、後ろから聞こえた聞き覚えのある声に振り向いた。
そこには一か月も経っていないが、久しぶりに見る懐かしい姿がそこにあった。
「アーテリアさん……それに、ティアドさんまで!どうされたのですか?」
「ハルナさん、お久しぶりね。今日は、王国から招待されたとのことでアーテリア様に誘われて、一緒にお披露目パレードを拝見しに来ましたよ」
「そういうことですが……何だったの、今の?」
オリーブが呆れた顔で、その事情を説明した。
「なにをやってるのかしら……まったく」
「だって、アルが!」
「”だって”じゃありませんよ。周りをよく御覧なさい……そっちの方が恥ずかしいでしょ?」
エレーナは落ち着いて周りを見渡すと、驚いた表情でこちらを見ているものが数名。
そしてエレーナと目が合うと、フッと目線を逸らされた。
確かに、今はもう落ち着いている。
緊張は解れたがその代わりに、ものすごい勢いで恥ずかしさが込み上げてきた。
そして式は、次の段階に進む。
「一同、グレイネス王のご登場である!」
最近では聞き慣れた、騎士団長の仕切る声が広場に響いた。
広場にいる一同はその場に立ち、パレード用の馬車が並ぶその前に王と王妃と王子が騎士団長と王宮精霊使い長の間に挟まれて歩いてくる姿を見つめる。
王は椅子の上に腰かけ、手をあげる。
一同はその合図で、元の席に座る。
ハルナも、周りを見ずに自然にその動作が身についてきた。
「今日はよく集まってくれた、感謝する。それでは、これより次期王選参加者の”お披露目パレード”の開催をここに宣言する!」
その言葉を聞き、この会場は歓声と拍手が沸き起こる。
「それではまず、王子が馬車へ」
騎士団長に言われステイビル、次にキャスメルという順番で乗り込む。
その馬車は二頭の馬につながれており、屋根のない赤い椅子が付いた馬車だった。
後ろに日よけなどで使われる幌が付いている。
「次に、精霊使い達よ。前へ」
ルーシー、クリエ、エレーナ、ハルナは立ち上がり、馬車に向かって歩いていく。
その後ろのそれぞれの付添いの者も、後を付いてい歩いて行った。
精霊使いの馬車は向かい合って座る4人掛けの椅子が付いている。
それが2つ並んで取り付けられていた。
それを馬は六頭で引いていく。
「アーテリア、あなたも付いて行きませんか?」
そう声を掛けたのはハイレインだった。
「ハイレインさん、お久しぶりですわね」
アーテリアが挨拶するのを見て、ティアドはお辞儀をする。
それに対して、ハイレインもお辞儀を返した。
「こういうのも久しぶりだし……どうだ、一緒に行かないか?」
「いえいえ、主役はあの子たちですし……」
「ならば、エレーナ達にパレードの説明やアドバイスをしてやってはどうですかな?少し舞い上がっておるようだし……な」
手と足が普段とは違うバラバラな動きになって歩いていく、エレーナ。
その姿を見たアーテリアは、頭を抱えため息を付く。
「もう、あの子は。……わかりました。ティアドさん、行きましょう!」
「え?」
アーテリアはティアドに確認することもなく、馬車の方へ導いていく。
その様子を見ながらハイレインはクスリと笑い、先導用の馬車の方へ向かい歩いていく。
「それでは、行ってまいります!」
ステイビルとキャスメルは父親のグレイネス王に向かって挨拶をする。
王は満足そうにうなずいた。
それ答えるように騎士団長が、正門前の警備兵に向かって声をあげた。
「――開門!」
門番の警備兵がその号令を聞き、大きな重い扉を開いた。
正門から街中へと続く道路のその両端は、人によって埋め尽くされていた。
人々はその姿を一目見ようと、期待を膨らませて待っている。
門が開き切ったところで、ファンファーレが鳴り響く。
その音に、町の人々は大声で応えた。
先頭の楽団が軽快なマーチを奏で、その後ろを先頭の馬車が付いて行く。
そこには騎士団長、精霊使い長、ハイレインが座っていた。
その次に、王子たちの乗る馬車が門を抜けていく。
「い……いよいよね!」
興奮気味にエレーナがハルナに話しかける。
「大丈夫エレーナ?鼻息が荒いし、目も怖いくらい血走ってるわよ!?」
「え?うそ!?」
「そういう時はね、こうやって掌に”人”って書いてね……」
ハルナは感じで人を書いて見せる。
「それをこうやって……(ゴクン)……って飲み込むのよ」
「なんですかハルナさん、それ?」
何故かオリーブが興味津々で聞いてきた。
「これは、”人を飲む”っていって相手を飲み込んでしまおうっていう……」
「でた!またハルナの世界で行われていた、残虐な話し!?」
エレーナがハルナが言い終わる前に突っ込む。
向かい側にいたティアドも、ハルナをみてギョッとする。
「いや……そうじゃないの!相手の気迫に飲み込まれるっていうでしょ!?その”飲み込む”なのよ!!」
「……何だ、精神支配の話しか。ならラファエル様に気に入られているハルナなら当然ね!」
「あーもう、何を話そうと思ったのかわからなくなったじゃないのよ!!」
ハルナが、怒ると同時にハルナ達を引っ張ってくれる六頭の馬達が嘶き歩を進め始めた。
そして馬車は門を潜り抜ける。
そこには、今までにない人の数と熱気と、それらを高い位置から見渡す初めての経験に二人は圧倒され、その雰囲気に飲み込まれていた。
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