蚤の市

銅架懸垂‐乳房と乳児薔薇窓の

押葉を跨ぐ市民雑踏

かつてをつづれもせぬ

つづれもせぬゆりのはなふところより噴きいづるゆりの

乳歯

環口類の酸海礁


部屋の無い邸宅

骰子

小円卓には山鳩の頸

かのつたはとこしなへにもなりぬらしおごそかならむ華霜のをとくに

窓に双翅類どもの

哂い

もっと流麗に死を築け

ペガスス

クリュサオール

末娘の刎頸からスープ罐の惹起する仄暗い埃の鏡へ

隠された死骸が鳥瞰図には山ほど在る

それは白塗りの劇俳優

それは黒人達の濡れた喉骨 


ぼくは

ぼくの舫う死を見たい

ぼくは

空っぽの

鳩の喉笛が

歌を

なぜ知っているのかを知らない


死よもっと悲愴に弓絃を擦れ

貿易港よ

黒い洋裁鋏よ

乾燥した肉体剥製よ

飛翔する乱鐘よ


非現実

過去という沈黙劇の布達を辞す

壁に濡れた瓦斯燈

濃緑の羊膜を揺蕩う、


丘陵には血の梢

蚤の市にて

そして鼠の、搦め取られのがれゆくは

薄暮、或は

黎初の腹腔‐棘の輪‐階段

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