1番になれた日

そんなこんなで迎えたテスト当日の朝

「橘、ちょっといい?」

東雲が姫奈を廊下に呼び出した。

「何?」

「橘、お前本気で来いよ!そしたら、お前に伝えたい事があるから…」

「えっ?も…もちろん本気でいくよ!悠音くんに教えて貰ったし…」

「良し!その言葉が聞きたかった!じゃ、後でな!」

東雲が姫奈の頭をポンポンし、去って行った。

「あんなんされたら、めちゃ緊張するじゃん」

姫奈は呟いたのだった。


時間ときは、過ぎ…

順位発表の日

「神様、お願い!」

祈るように順位表を見上げる姫奈。


1位 東雲悠音

2位 橘姫奈

:

:


「あーもー」

落胆している姫奈の横に

「残念だったな。橘」

東雲がいた。

「もー悠音くん」

「橘、オレが言ったこと覚えてる?」

「う…うん」

「じゃあ、一緒に来て」

そういうと、姫奈の腕を掴んで歩いて行く。

「悠音くん、何?」

「良いから、着いてきて」

そう言われ、姫奈は大人しく着いていくことにした。


人気のない図書室に来ると掴んでいた腕を離した。

「橘、オレ…」

「うん」

「オレ、お前が好きだ」

「えっ?」

突然の事に姫奈が驚いて聞き返した。

すると、東雲が話し出した。

「ずっと前から好きだった。橘は知らないと思うけど、オレ、橘と同じ塾だったんだ。」

姫奈が、落ち着きを取り戻し

「…そうだったんだ」

東雲の話を聞いていた。

「いつも、実力テストの結果が10人張り出されてただろ?それで橘の事を知って、橘に追い付きたいと思って、それからすっごい勉強して、橘と同じ高校を受けた」

「うん…」

「合格した時は、すごく嬉しかったよ。憧れだった橘に並んだような気がした。それで、1番最初の順位表でオレが1番になった時、あぁ…やっと橘に追い付いたって思ったんだ。でも…」

「ん?」

「でも、そうじゃなかった。オレがなりたかったのは、1番じゃなくて橘の隣に立つ存在だった。いつからか橘は憧れじゃなくて、好きな女性になっていた」

「うん…」

そこまで聞いていた姫奈は半泣きだった。

「だから、橘に付き合ってって言われた時は夢かと思った。聞き間違いかと。でも、実際は勉強の方だったけど…」

「うん…ごめん」

「今は、紙の上ではオレが1番かもしれないけど…オレの中では、姫奈がずっと1番なんだ」

「悠音くん…」

「だから、オレと付き合って下さい」

東雲は、ここまで早口気味に話すと頭を下げた。

「悠音くん…顔を上げて」

姫奈が泣きながら、東雲の名前を呟く。

東雲が頭を上げると、姫奈が抱きついた。

「悠音くん…ずるい。そんなこといわれたら…」

「うん」

東雲が姫奈の背中を擦りながら言う。

「私も好き。ずっと…悠音くんの1番でいさせて…」

「うん…当たり前だよ」

そういうと、力強く姫奈を抱きしめた。

「姫奈…」

姫奈が少し背の高い東雲の顔を見上げる。

「愛してる」

東雲はそう言って姫奈に口付けたのだった。



-この日、いつも2番目だった私があなたの1番になれました-

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

1番の彼と2番の私 篠宮玲 @sora-rei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ