42話:破局? それとも……? PART2

 外では話せないような大事な話をするからか。未仔が指定した場所は自分の部屋だった。


 地元の駅へと降り、その足で未仔の家へと夏彦は急ぐ。

 そして、今現在は神崎家の門前。


 度々遊びには来ていた。けれど、ここまでインターホンを押すことに緊張するのは、未仔父との死闘を繰り広げた日以来だろう。

 深呼吸を1つし終え、夏彦はインターホンを押す。


 ちちが出るか、天使みこが出るか。


「あ……」


 現れたのは天使だった。


 天使とはいえ、いつもの明るい天使ではない。

 いつ帰ってきたかは分からないが、部屋着ではなく私服らしきワンピース姿。

 少し濡れた三つ編みが、何処へも寄らず真っ直ぐ帰宅したことを容易に想像させ、夏彦の心臓をキュッと締め付ける。


「いきなり呼び出しちゃってごめんね」

「いや、俺の方こそ……」


 ギコちない否定をすれば、未仔は静かに微笑みつつ家へと手招いていくれる。

「おじゃまします」と挨拶を終え、夏彦は玄関で靴を脱いでいく。未仔の両親は不在のようで、玄関にあるのは未仔の靴のみ。


「私、飲み物の準備してくるね。先に私の部屋で待っててくれる?」

「あっ。気を遣わなくても――、」

「ゆっくり話したいから。ね?」

「う、うん……」


 言われるがまま、夏彦は階段を上りつつ未仔の部屋へ。

 当然、いつものようにはくつろぐ気にはなれない。


 緊張は嗅覚をも麻痺させる。未仔の部屋から香ってくるはずの甘く華やかな香りが分からない。クーラーが効いた部屋にも拘らず、背中からはじんわりと脂汗も出てきてしまう。

 ベッドに横たわる、クマのヌイグルミの視線も気になってしまう。


「そんなに睨むなよ……」


「何、未仔ちゃん悲しませとんねん」と言わんばかり。未仔一番のお気に入りヌイグルミ、ナッツにも睨まれている気がしてならない。


「ナツ君、開けてもらっていい?」

「あっ、はい!」


 立ち上がった夏彦はすぐさま扉を開けば、氷がたっぷり入ったジュースやバラエティ豊かなクッキーをトレイに載せた未仔が顔を出す。

「ありがとね」と未仔が感謝すれば、自ずと2人は小さなテーブルに向かい合って腰を下ろす。


 久々に再会し、カフェで話し合ったときの緊張が蘇る。

 互いにモジモジ、ソワソワ。

 未仔は少し濡れた髪を忙しくなく触ったり、大きな瞳でチラチラと夏彦を見たり見なかったり。

 夏彦は夏彦で、意味無くコースターを動かしたり、ストローでチビチビとジュースを飲んだり飲まなかったり。


「ナツ君はカルピスで大丈夫だった?」

「も、勿論! 俺、カルピス大好きだよ!」

「……えっと、味は濃くない?」

「全然濃くないよ! あっ! 薄いってことじゃなくて、好みの濃度ってことだから!」

「そっか。なら良かったです」

「そうそう! 良かった良かった!」

「……えへへ」

「あはは……!」


「「……」」


 お通夜か。

 そうツッコみたくなる、しらけっぷり。

 いつものバカップル加減なら、カルピスの好みの濃さだけで小一時間は話せる。けれど、今現在は10秒弱。


 夏彦は思う。


(いやいやいや。俺はいつまで頭真っ白なんだよ)


 これ以上、最愛の彼女を悲しませるわけにはいかないし、悪い結末ばかりイメージして固まっている場合ではない。『大好きな彼女と歩み続けていきたいからこそ、今この場所にいるんだ』と己に強く言い聞かせる。


 視線は自ずと、未仔の背後、壁に掛かったコルクボードへ。

 ボードに貼られた写真は、夏彦と未仔の2ショットばかり。休日や放課後デート中に撮ったものが多く、1枚1枚目を通すだけで楽しかった時間が鮮明に蘇ってくる。


 幼き頃、夏祭りで一緒に撮った思い出の写真だって、今もしっかり飾られている。

 あのときは、迷子の妹を一緒に探しただけ。

 けど今年は違う。夏祭りデートを一緒に満喫するのだ。


 最高の思い出をまた1つ刻みたいからこそ、夏彦は覚悟を決める。


「あのっ!」

「!!!」


 決意に満ち溢れた夏彦の表情や声音に、未仔の小さな身体がビクン、とはねる。

 未仔も察したように、正していた姿勢をさらに正す。

 そして、勢いよく頭を下げる。


「未仔ちゃん! 誤解を招くようなことをしてごめんなさい!」

「ナツ君! 勘違いしちゃってごめんなさい!」


「「へっ?」」


 夏彦だけでなく、まさかの未仔も謝罪。

 思わぬ共鳴に、顔を上げた2人はパチクリと見つめ合ってしまう。







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【雑談】

Twitterでもボヤいたのですが、Youtubeで公開されているおぱもみのPVが5万回再生を突破していました(笑)

BGMオンリーなのにスゲーです(☝ ՞ਊ ՞)☝



【暇つぶしにどうぞ】

『構って新卒ちゃん』の連載版も不定期投稿をスタートしたので、暇が有り余ッティな方は是非是非。

日本酒好きの先輩LOVEな後輩ヒロインです。( ̄^ ̄)ゞ



-作品はコチラから-

https://kakuyomu.jp/works/1177354055408420052

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