19話:意外な共通点 PART2
その後も、未仔と奏は再会を祝し合うかのように昔話に花を咲かせたり、近況を語り合ったり。
「やっぱり、見た目どおり優しくて気配り上手な人だ」と夏彦は思った。
そう確信してしまうくらい、奏は夏彦にも話を振ってくれたり、聞いて聞いてと昔話を共有してくれたり。
未仔の喜ぶ姿が見れるのなら、いくらでも
しかも、嫌々ではなく、ナチュラルに話題を振ってくるのだから嬉しさは倍増。
「未仔ちゃん、家庭部に入りたての頃は、私の料理してるところをずっと観察したり、たくさん質問してきたんだよね。
「エプロン姿の未仔ちゃんが、一生懸命メモしてる姿が思い浮かびます! いいな~、俺も見たかったなぁ~」
「中学時代の未仔ちゃん見てみたい?」
「えっ! ……もしかして、写真とかあるんですか?」
「ありま~す♪」
奏がスマホを手早く操作し終え、期待に満ち溢れた夏彦へと手渡す。
「わぁぁぁ~~~……。か、可愛ええ…………!」
ディスプレイを見つめる夏彦が、うっとりしてしまうのはご察しの通り。
今よりも一回り小さいエプロン姿の未仔が、照れ気味スマイルでピースサイン。
カメラレンズを向けられ恥ずかしかったのだろう。けれど、断らずに精一杯応じてくれる優しさが垣間見え、バカレシはキュン死寸前。
「可愛いでしょ~♪ 未仔ちゃんをスマホの待ち受けにするのが、ウチの学校では大流行だったんだよ?」
「!? 何ですかその初耳情報! 詳しい話を是非!」
「最初、私がこの写真を待ち受けにしてたの。そしたら家庭部の子たちにも大好評で、『私たちも待ち受けにしたいから頂戴!』って」
「成程……! 瀬下さん→部員→クラスメイト→全校生徒の順に、未仔ちゃんの写真が広まっていったんですね!」
「そうそう! 三日も掛からなかったんじゃないかな? 気付いたら学校中の皆が未仔ちゃんを待ち受けにしてたんだよねー♪」
これ以上、一大ムーブメントに乗り遅れるわけにはいかないと、夏彦はすかさずポケットからスマホを取り出す。
「瀬下さん! 俺も待ち受けにしたいので写真ください!」
「いいよー♪ せっかくだし、LINEも交換しちゃおっか」
「えっ。連絡先まで交換してくれるんですか?」
「勿論! あと、名字じゃなくて下の名前で呼んでくれたら嬉しいかな」
「! りょ、了解です! か、奏さんっ」
「うんっ。よく言えました♪」
年上お姉さんの
一方その頃、未仔ちゃん。
彼女である未仔は、大好きな彼氏と先輩が仲を深めてくれるのが嬉しくて堪らない。
しかし、それ以上に、
「二人とも恥ずかしいよう……っ!」
中学時代の伝説。さらには、自分の写真が交換されていることが恥ずかしくて堪らない。
照れている写真が普通に思えてしまうくらい、未仔は両手を顔で隠して大赤面である。
「こんな可愛い子が彼女なんて、夏彦君は幸せものだね~」
「間違いないです。毎日が幸せ過ぎて、1日が全然足りないくらいですからね」
夏彦がサラリと
「私、安心しちゃった」
「? 何にですか?」
「夏彦君が未仔ちゃんを大事にしてくれてることに」
夏彦だけでなく、恥ずかしがっていた未仔も顔を上げ、奏の言葉に耳を傾けてしまう。
「ずっと気になってたんだ。未仔ちゃんが美味しい料理を作ってあげたり、高校を変えてまで一緒にいたい人って、どんな男の子なんだろうって」
大切な後輩だからこそ、「本当にその男は大丈夫なのか?」であったり、「悪い男に騙されているのでは?」などと心配だったようだ。
いつぞやの未仔父のときのように、男としての決意を奏に宣言したわけではない。
それでも、奏は夏彦のことを信じてくれる。
気配りができるということは、観察眼にも長けている。この僅かな雑談だけでも夏彦のお人好しさ、如何に未仔を大切に想っているのかを知るには十分だった。
何よりも、
だからこそ、奏は未仔の頭を優しく愛撫しつつ、祝福してくれる。
「未仔ちゃん良かったね。素敵な彼氏ができて」
いつまでも恥ずかしがっている場合ではないと、未仔も負けじと笑顔に。
そして、元気いっぱいに答える。
「はいっ♪ 毎日が幸せ過ぎて、1日が全然足りないくらい幸せなんです!」
「み、未仔ちゃん……!」
「えへへ♪」
奏へ伝えるだけでなく、夏彦への
誰をも幸せ状態に誘う未仔の全体攻撃に、夏彦の心臓は高まるばかり。公衆の面前、先輩の前でなければ抱擁は必至だったろう。
「夏彦君。これからも未仔ちゃんを幸せにしてあげてね?」
「勿論です! 未仔ちゃんを幸せにできるよう死力の限りを尽くします!」
夏彦がそのまま敬礼すれば、「頼もしくて何よりです♪」と、奏までもが敬礼ポーズ。
おっとり優しいだけでなく、案外ノリの良い先輩である。
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次話で1章分が終了予定。
振り返ってみると、ゲームの話と妄想話が過多(笑)
大規模な台風10号が接近中とのことなので、対象地域の方たちはお気をつけて!
対策はしっかりと!
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