55話:夜は長い……? PART1

 琥珀に、からかわれている場合ではない。


「ナツ君?」

「ひゃい!?」


 ドアをノックする音、自分を呼ぶ声が夏彦を跳ね上がらせる。

 深呼吸を1つし終え、ドアを開けば、不思議そうに見つめてくる未仔の姿が。


「大きな声出してどうしたの?」

「い、いや!」


 罪悪感MAX。いくら琥珀のせいとはいえ、未仔のあられもない姿を想像してしまったのは自分である。

 風呂から上がってきたばかりらしい。未仔の白かった肌はポカポカと火照り、コンディショナー香る長髪は、三つ編みお下げからストレートヘア。控えめなメイクも一切施されていないナチュラルな素顔は、一層に夏彦の鼓動を速まらせる。

 目の充血も幾分かはマシになっていて一安心。


「さ、騒がしくてゴメンね! 知り合いの関西女が、電話でデリカシーないこと言ってきたから! ハハハ……!」

「そう、なの?」


 キョトンとする未仔。一糸纏わぬ姿を想像されていたことなど知るよしもなく。

 これ以上、愛する彼女を己の手で汚すわけにはいかない。


「折角だし、俺の部屋でお喋りしようよ!」


 わざわざ自分の部屋を訪れてくれたのだからと、未仔を手厚く持て余すことに夏彦は全集中。というより、集中しなければ顔が発火してしまう。


「お喋りの気分じゃないなら、ゲームとかはどうかな? 今日のゲーム実況で観たホラゲも持ってるし、マリオメーカーとかのパーティー系もあるからさ」

「あっ……、えっとね」

「最初は皆初心者だから大丈夫、大丈夫。俺がちゃんと教えるよ」

「ううん、そうじゃなくてね……?」

「???」


 不思議に感じてしまう。首を横にフルフルする未仔は、いつになく否定的に見えたから。

 何よりもだ。いじらしく内股をすり合わせる姿は、『最初からしたいことがある。けれど、口に出すのが酷く恥ずかしい』と言っているようだった。


 予感は的中する。


「未仔ちゃん?」


 意を決した未仔が、夏彦の袖を小さな手で掴む。

 そして、ジッと見上げつつ言うのだ。


「一緒におやすみしたい、……です」

「…………。え?」

「あ、あのねっ! ナツ君とおやすみしたいの!」

「……………………。!!!???」


 未仔の口から発せられる、まさかの爆弾おねだり発言に、夏彦は混乱メダパニ必至。

 脳内には、関西女のデリカシーの欠片もない言葉の数々が蘇ってしまう。



 既成事実作っちゃえばええんとちゃう?

 狼になれば一発解決かもなぁ。

 ズッコンバッコン。



「~~~~~~っ! 俺のアホォ!」

「ナ、ナツ君!?」


 これ以上の妄想は極刑に値すると、夏彦シャウト。

 ウチの未仔ちゃんに限って、やらしいお誘いじゃないことくらい分かっている。純粋に一緒に寝たいだけなのを理解してはいるのだが、想像してしまうのは男子高校生のさが、宿命。


「お、おおおおおおやすみ!? 未仔ちゃんと俺が!?」

「……ダメ?」

「ダ、ダメじゃないダメじゃない! というか! 未仔ちゃんがダメじゃないの?」

「ダメだったら、ナツ君にお願いしないよ?」


 ごもっともな意見に、夏彦は言葉を詰まらせてしまう。

 とはいえ、言葉を詰まらせている時間さえ惜しい。今の時間にも、未仔は恥ずかし気に俯いてしまっている。

 ひょっこりと隣部屋から顔を出す新那なぞ、「モタモタするな」とでも言いたげ。右手を小さく突き上げてGOサインを出し続けている。

 とにもかくにも、彼女にこれ以上恥をかかせるわけにはいかない。


「そ、それじゃあ、一緒に寝る……?」


 夏彦の意を決した発言に、未仔の顔が上がる。

 表情は勿論、不安から喜びへ。


「うん♪」


 夜はまだ長い……?






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琥珀のセクハラ発言がフラッシュバック。

というお話でした。


彼女と初デート、さらには、おやすみまで一緒。

全部一日セットだから羨ま死。



【雑談】

久々に未仔のヘアスタイルについて描写した気がします。

この作品の書き始め当初、「三つ編みヘアスタイルって皆嫌がるかな?」と若干の不安がありました。

けど、僕は明るい髪に三つ編み女子萌えだったので、己の信念を貫いた所存です。

牧場ガール的なの凄い好き。


自分の書きたいことをやりたい放題できるのが、WEB小説の強みだと思う今日この頃。

歯止めが効かなくなると思う今日この頃。


一長一短っ。



皆さんはどんなヘアスタイルが好き?

教えてくださいまし。




おっぱいフレンズは、ブックマーク&評価よろしくどーぞ。

Twitterもやってます(☝ ՞ਊ ՞)☝

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