53話: 親友は頼もしい PART2
自室へと一人戻った夏彦は、ベッドへ倒れ込んでしまう。
「さすがに疲れた……」
未仔と付き合い始めたこと、未仔が父親と喧嘩して家を飛び出してしまったことなど。
事態をややこしくしない、かつ未仔を傷付けないよう言葉を選びながらの説明は、中々にヘビーな任務だったようだ。
そんな夏彦や新那の努力の
しかし、宿泊許可が得れたからといって、事態が収束に向かっているかといえばNO。ただ、猶予が伸びただけ。
事態を先延ばししただけで、何も良い方向へは向かっていない。
「どうしたもんかなぁ……」
未仔と父親には仲直りしてほしい。
仲直りしてほしいものの、解決策はやはり思い浮かばない。
頭をひねり続けるが、具体的どころか抽象的にも解決の糸口が掴めない。
考えれば考えるほど、どんどんマイナスな案しか浮かばなくなってしまう。
『未仔ちゃんと別れる』
「っ……」
最も邪悪な案が思い浮かべば、反射的に身震いが起こる。
導き出す答えとしては絶対に有り得ない。そもそも、別れたところで丸く収まる話でなければ、未仔を悲しませるようなことは絶対にしたくない。
にも拘らず、『別れる』という選択肢がどうしようもなくチラつく。絶対に有り得ない案なのに、頭の中から消えてくれない。
ベッドに沈む身体は、気が滅入れば滅入るほど、どんどん深く沈んでいる感覚に陥る。
「……ん?」
そんな沈みゆく夏彦を引っ張り上げるのは、1本の電話だった。
『ナツー。ゲームしよやー』
電話の主は琥珀。今もゲーム中のようで、ゲーム音であったり、コントローラーをカチャカチャする音も聞こえてくる。
悩みなど知る由もない悪友の声は、能天気といえば能天気なのだが、不思議と安堵感を与える。
それでも、ゲームを一緒にするまでは至らない。
「悪いけどパス。今、そんな気分じゃないんだよ」
『なんやなんや。今日のデート失敗したくらいで落ち込みなや』
「!? し、失敗なんかしてねーし」
『無理無理無理。盛大にやらかしてないと、そんな死に声出さへんやろ』
「うっ……」
『はてさて。バトロワゲーの誘いやったんやけど、ナツの声聞いてたら、久々にバイオしたくなってきたわー。よっしゃ! 今からリメイク版インストールするから、30分後にシェアプレ――、』
「シェアプレイせんわ! てか! 人をゾンビ扱いすんじゃねー!」
ベッドから起き上がるほど。夏彦渾身のツッコミに、琥珀はケラケラとご満悦。
『いや~。ナツは扱いが楽でええわ~。ワレモノとか生モノより宅配が楽なんちゃう?』
「ちくしょう……。お前宛てに俺を速達してやりたい……。箱を開けた瞬間、グーパンしてやりたい……!」
『開けるわけないやん。ゴミ収集車のプレスで一発やで』
「粗大ゴミに出された……?」
『可燃ゴミとか不燃ゴミって言わないあたり、ウチとしてはポイント高いよ』
「そんなポイントいらんわ!」と夏彦はツッコみたいが、これ以上琥珀の玩具になってたまるものかとグッ、と言葉を我慢。
『で、ナツは何で落ち込んでんの? どーせ、未仔ちゃん絡みではあるんやろ?』
「全てお見通しって言い方が腹立つ……。まぁ、その通りなんだけどさ」
『ウチが相談乗ったるから言ってみ言ってみ』
『ド~ンと胸貸したる!』と雄々しすぎる琥珀の言葉。
大雑把な性格だし、興味本位でしか聞いてくれないかもしれない。それでも、琥珀自ら相談に乗ると言ってくれている。
夏彦は心を許してしまう。
「俺が原因で、未仔ちゃんとお父さんが喧嘩しちゃっててさ。それで仲直りして欲しいんだけど、どうすればいいかで悩んでるんだよ」
『……ほう』
「でさ。悩めば悩むほど、『俺のせいで、未仔ちゃんの人生狂わせちゃったのかな』って悪い考えしか浮かばなくなってきてるんだ」
溜め込んでいた気持ちを吐露し、それを聞いている琥珀もまた、『成程なぁ……』と深々と重々しく息を吐く。
未仔と新那の関係同様、琥珀もまた夏彦の親友。
だからこそ、親友へ手を差し伸ばすのは当たり前のこと。
『しょーもなっ』
「…………。えっ……」
ということはなく。
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前回の親友は、未仔と新那。
今回からの親友は、夏彦と琥珀。
関係は人それぞれ。
【雑談①】
僕は兵庫に住んでるのですが、ついに緊急事態宣言が出ちゃいましたね……。
カフェで作業するのも、しばらくはお預けかなぁと。
寂しいですが、これを機に家でも快適な作業できるよう、模様替えやら掃除やら頑張りまっす。
家に長時間いるときは、皆さんも換気しっかりね。
【雑談②】
こんな世の中なので、中々に暇を持て余すことも多いと思います。
というわけで、僕の前作、『お前ら、おひとり様の俺のこと好きすぎだろ。』の試し読みページ&特集ページのリンク貼っときます。
まるっと1章分(100ページくらい)読めるし、ヒロインたちの可愛いイラストも見れちゃいます。短編と思えば、丁度良く小腹を満たせるかなと。
30分くらいの暇は潰せると思うので、未読なおっぱいフレンズは是非是非。
おひとり様読者は、もう1度見直せい。ʅ(◔౪◔ ) ʃ
‐試し読みページ‐
https://fantasiabunko.jp/sp/201808ohitorisama/image/ohitorisama_trial.pdf
‐特集ページ‐
https://fantasiabunko.jp/sp/201808ohitorisama/
おっぱいフレンズは、ブックマーク&評価よろしくどーぞ。
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