8話:未仔ちゃんは、健気で甘可愛い PART1

 夕焼けを背景に、可愛い女の子のおっぱいを揉むのは、乙なことなのかもしれない。

 しかし、



 おっぱい揉んでいいので、私と付き合ってください。



 あまりにもパワーワードすぎる。狂人化していた夏彦でさえ素に戻ってしまう。

 たとえるなら、ドラクエ初代ボスに、「わしを仲間に入れてくれれば、世界の半分を勇者にやろう」と言われるレベル。


 ノーリスクハイリターン、目が眩みそうなほどの甘い誘惑に、「何か裏があるのでは……?」と警戒してしまうのは常人の正しき判断である。


 というわけで、付き合う付き合わないにせよ、揉む揉まないにせよ、まずは言葉の真意を知ることから夏彦は始めることに。


 少女とともに元来た道を戻り、駅チカにあるカフェへと場所を移す。


「この席でいいかな?」

「う、うんっ」


 角側にある2人用の席に腰掛け、注文したドリンクをテーブルへと置けば、ようやく話し合える環境が整う。

 真っ直ぐに向かい合えば、当たり前に小柄な少女が目の前に。


 庇護ひご欲を掻き立てる可愛らしさは今も昔も健在。

 健在とはいえ、「可愛くなったなぁ」というのが夏彦の感想だった。

 小柄で童顔なだけに、クリッとした瞳は一層と魅力的に見えてしまうし、グロスが薄く塗られた小ぶり唇は、ちょっとした大人っぽさも醸し出している。


 髪型は今も昔も変わらない。肩に少し掛かるくらいの長さの髪を左右に縛り、丁寧に編み込んだ三つ編みスタイル。

 同じ髪型にもかかわらず、がらりと印象が変わっているのは、ミルクブラウンにカラーリングされた髪色のおかげだろう。明るい髪色と三つ編みが凄くマッチしていて、小動物系の少女の顔を一層に映えさせている。


 総評、凄く可愛いです。


「綺麗になったね」と夏彦が言えたらいいのだが、そんなスマートなことが言えるわけもなく。そもそも、そんな気の利いた言葉がすんなり出るのなら、とっくに童貞を卒業している。

 それどころか、『めちゃくちゃ可愛い子』と再認識してしまったため、心臓の鼓動が高鳴ってしまう。「こんな可愛い子が彼女に? しかも、おっぱいも揉ませてくれる……?」と煩悩が脳細胞を壊し始めてしまう。


 対して少女はどうだろうか。


 俯き気味に前髪をせっせと動かしたり、キョロキョロと大きな瞳を夏彦に向けてみたり、自分の注文したチョコレートラテに向けてみたり。

 少女は少女で、一世一代の告白をしているだけに、だいぶ緊張しているらしい。


「……」「……」


 互いにドギマギ、ソワソワ。視線が一点に定まらない。

 とはいえ、視線を互いに向けたり向けなかったりを繰り返せば、ピッタリと見つめ合う瞬間だってある。


「「!」」


 視線が、ぴったんこカンカン。

 視線と視線が交差するとき、物語は始まる。


 2人は意を決する。


「あのさ!」「あ、あの!」


「「!?」」


「ご、ごめん先言って!」「どーぞっ、どーぞっ!」


 お見合いか。





///////////////////////

お待たせしました。メインヒロイン降臨。

ジャブ程度の甘さを、まずはお届け。

明日はもっと甘くなります。読んだらちゃんと歯磨きしてね。


ありがたいことに、なろうとカクヨムの日間ランキングで、同時1位をいただきました。ブックマーク&評価いただき、本当にありがとうございます!

今後ともよろしくどうぞ!

///////////////////////

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る