6話:おっぱいを揉みたいと叫ぶ30分前の話 PART5
「えー。マクド行こや。どうせ暇やん、お前」
「どうせ言うな! 暇だけどさ!」
「ナツのそういう素直なとこ、ウチは結構好きやで」
「勿論、友達としてやけど」と釘どころか
「まーまー。そんな悲観的にならんでも。ナツに彼女がいつできるかは知らんけど、それまではウチがガッツリ遊んだるやん。一肌も二肌も脱いだるやん」
『一肌も二肌を脱ぐ』を表現するためか。琥珀はシャツの襟部分を掴むと、ぐい、とインナーごとスペースを拡げる。
「!!!」
そこは男の
男勝りであれど、琥珀は顔もスタイルも特級品。普段拝むことのできない鎖骨などのデコルテライン、さらには、制服からでも隠しきれない豊満な胸のふくらみが、煩悩の世界へと歓迎会を開催。
おもてなしは底知れず。ブラ紐だ。ブラ紐まで見えている。紺色で細紐タイプのがくっきり見えている。
デコルテライン、胸のふくらみ、ブラ紐。
究極3連コンボだドン。
さすがの夏彦でさえ、ガン見するのは危険すぎる。このままでは、リトル夏彦が反抗期を迎えてしまう。童貞の性。
『目の前の奴は、女の形をしたオッサン』と胸中で唱えつつ、夏彦は指摘する。
「琥珀、見えてる」
「んん?」
指差されれば、ようやくブラ紐が見えていることに琥珀が気付く。
普通の女子ならば、「キャー、のび太さんのエッチ」的な感覚で赤面するのだろう。
けれど、女の形をしたオッサンは、チャック開いてますと指摘された感覚なのか。
「ほんまやね」
何食わぬ顔で襟を正すだけ。
「お前、本当に女なのか……?」
「ブラ紐如きでヤイヤイ言いなや。所詮、乳支えるだけのもんやん」
「……。発想が女子じゃねえ……」
「そんな男らしいウチのおっぱいガン見しとったのは、どこのどいつカナ?」
「!?!?!?」
立派な胸の持主は、他人が胸に注目しているのが分かる。
そんな話は、都市伝説だと思っていた夏彦は、身を持って体感する。
本当の話だったと。
琥珀は、新しい玩具を見つけたかのように、イヒッと笑う。
そして、羞恥心無い系女子は、セクハラ大魔神と化す。
「お、おまっ……!?」
「ほら夏彦ちゃーん、オッパイでちゅよー♪」
推定EかFはあるであろう豊満なバストを、下から
右手に右乳、左手に左乳。まるで、「メロンやスイカいかがですか?」の如し。
しかし、目の前にある代物は、メロンやスイカではない。おっぱいだ。
「か、かかかかからかうなぁ! 胸を見せびらかすな! 寄せるな! 近づけるな! 俺の純情を汚すなぁ!」
胸を押し付ける寸でのところで、琥珀が吹き出して大爆笑。
「ひゃはははは! ナツ、反応可愛すぎ! ウチの胸で興奮しすぎ~~~!」
「最低だ! 最低の女だ! 下品にも程がある!」
「ほんま。童貞言うたら怒るくせに、純情が汚れるとか言いなや。キャラぶれぶれやで」
「うるさい! うるさい! てか、16歳で童貞は普通だからな!? 多分! いいや絶対! JISでも規格されてるに違いない!」
「そんなこと言う奴に限って、一生童貞のままなんやで?」
「ぐっ……!」
「そんなこと言う奴に限って、30歳近づく頃には、『30まで童貞貫くと魔法使えっから』とか開き直るんやろなぁ」
「ぐぐっ……! ……本当に魔法が使えるなら、お前を消し炭にしてやりたい……!」
「アホか。本当に魔法使えるなら、ウチかて一生処女でおるわ」
「くぅぅぅぅ~~~~! 何でコイツは、俺と対等な立場のくせに堂々としてるんだ……!」
「価値観って人それぞれやからちゃうかな」
「今更、良いこと言っても無駄だからな!?」
彼女がいないことをからかわれ、童貞だとからかわれ、おっぱいを使ってからかわれ。
全てにおいて夏彦、大敗。
戦略撤退というか、メンタル的に撤退せざる得ないというか。
リュックの中にマガジンをぶち込んだ夏彦は、勢いよく立ち上がる。
そして、
「今に見てろよ! 超絶に可愛い彼女を絶対作ってやるからな!」
その宣言は、奴隷解放宣言のように革命的なものではない。
三下ヨロシクな、バイバイキーンのような、敗者が去り際に吐く悲しきセリフに近い。
「お前の、おっぱ――、胸なんかに目移りしないくらい、可愛い子とイチャイチャするから! お前に自慢してやるから覚悟しとけ! 分かったか!?」
「あ。妄想話長くなりそう? やったらマクドで話さへん?」
「チクショォォォォォォォ―――~~~~!」
夏彦は琥珀を捨てて走り出す。
ただガムシャラに。
己の
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-お知らせ-
次回、壊れた夏彦が走ります。
バカ同士の会話が好きという方は、ブックマーク&評価お願いします(笑)
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