サンタクロースは存在しない

椎名

第1話

21歳の冬。


短期のアルバイトをこなし駅へ急ぐ。


日は落ち頰をかすめる空気は冷たく、

木々という木々は電飾を背負い息苦しそうにしている。


12月は空気も街も、街行く人全てが輝いてみえる。

わたしはその輝きにははいれない。


(19時38分の空いている電車に乗りたい)


それだけを考えながら駅へ急ぐ。


出来るだけ輝きに触れないようにしながら

波長を速める。


BUMP OF CHICKENを聴きながら

輝きから身を守る為に膜を作る。


(はやく、膜をつくって)

(お願い、消えたくない)


小学生の頃の希望に溢れた''わたし''が

今のわたしをみたらどう思うだろうか。


12月は大好きだった。


でも今のわたしはサンタクロースが存在しないことを知っている。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る