第36話 地下洞窟の広場
「……」
「……ヒミ、大丈夫デスカ?」
「うん、平気だよ。大丈夫」
更に先へと続く道を二人は進み続けた。
定期的にススがヒミに声をかけ、体調を確認し、励ます。
ススもかなり疲れが溜まってきた。
体力では自信があったが、足がズキズキと痛む。一体どれだけの距離を歩いたのだろうか?まさか既に村から出たのだろうか?
「……」
やはり、道が少しずつ広くなっている。これが意味するのはやはり……
「スス!見て!穴が見えた!」
「穴?」
ススは先をよく照らしてみると、確かに穴らしきものが見えた。
これは、出口なのだろうか?
ようやく、ようやくこの長い道のりに終結が訪れたのだろうか?
「やった!やったぁ!やっと!やっとだよ!スス!出口だぁ!」
ヒミが正気に戻ったかの表情で、穴の方へ駆け出して行く。
「待ってクダサイ!ヒミさん!!」
「ふぇっ?どうしたの?スス」
「ワタシが先に行って様子を見てキマス。ヒミさんはここで少し待っていてクダサイ」
「え、でも……」
「嫌な予感がするんデス。大丈夫デス、安全だとわかったら、直ぐに呼びますカラ」
「….…わかった」
意外と素直にヒミは了解してくれた。
ヒミ自信の力量を、本人も理解しているからだろう。
……穴の先に何かがあったとして、ススにもしもの事があった場合、ヒミだけでも逃げて欲しかった。
だから、ススはヒミに10分経過しても、こちらに戻って来なかった場合と、ススの悲鳴や叫び声が聞こえた時点で、引き返せるなら引き返して欲しいと頼んだ。
助かる可能性が、僅かでもあるのならば……初めは違和感を覚えていたヒミだが、ススの説得によって、なんとか納得してくれた。
「じゃあ、行ってキマスネ」
「うん、気をつけてね。私、待ってるから」
ススは穴の先へと足を踏み入れた。
***
「…………」
穴の先にあったのは、大きな広場だった。無数にあった穴は結局、最終的には全てこの穴に終結しているようだ。
枝分かれした穴は、どこかで合流し、この場に行き着く。途中のあの壁がポイントだったのだろうか?
ススは辺りを見回してみる。
中央には小さな泉があり、チョロチョロと清い水が流れている。この水は、村から地下へと繋がっていたのだろうか。村にはいくつか、川や湖など豊富な水源が点在しているが、その内の一つなのだろうか。広場を取り囲む壁にはツタや苔が生えている。若干魚のような生臭い臭いがある。
かなり広い広場だが、地下空洞に何故このような場所が。人為的では無く、自然に作られたものなのだろうか?
中央の噴水の付近に、何かの石像があった。
「石像……」
こんな地下に何故石像が?
かつて、脱出経路とて使用されていた時に、誰かが作ったのだろうか?それとも。持ち込まれた?
「……」
この地下洞窟に感じる違和感。本当に脱出経路「だけ」が目的だったのだろうか?
今のところ、モンスターが現れる気配も無いし、ヒミを呼んでも大丈夫だろうか?
広場にあるのは、石像と湖のみで、先に行けそうな道はなかった。人が使用した形跡は、何となくありそうなので、何かあるのではと思った。
ススは中央の石像を調べてみる事にした。
石像は小太りの髭を生やした(恐らく)男性の石像だった。
柔らかい笑顔で右手を大きく上に上げている。
一体誰の石像なんだろうか……
「?」
ススは石像の近くをよく調べる。
石像の建っている場所の地面に耳を向けてみる。
ゴォォォォォォォ……
微かに音が聞こえる。
もしかして、この下に……何かが……!!
とりあえず、ヒミを呼んでから考えよう。出口は近そうだ。
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