抜けないのなら壊せばいい
@callas
第1話
「うぅぅ……ぎもぢわるい……」
職場の飲み会で、雰囲気に流されて大量に酒を飲んだソフィアはかなり酔っていた。
「お…おい大丈夫か?」
「らいじょうぶ……らいじょ……オエェェェ」
「うわぁ!!!」
胃の中のものを吐き出し、いくらかすっきりしたソフィアは、同僚の心配をよそにフラフラと町中を歩きだした。
「あぁ~気持ちがいい~」
夜風が頬をなでていく。
火照った顔には調度いい。
ふらふら……
ふらふら……
縺れる足でたどり着いたのは、町の中心にある賢者の岩。
かつて賢者がその岩に聖剣を突き立て、『これを抜いたものが勇者である』と宣言したと言われている。
…………………
………………………
「………エイッ」
何を思ったのか、ソフィアは突如剣の柄を握って引っ張った─が、聖剣がそう簡単に抜けるはずかない。
「にゃんでぬけないのよぉぉぉ~~」
彼女は岩によじ登り何度も剣を抜こうと引っ張った。
しかし、抜ける気配すらない。
先に言い訳をしておく。
彼女は酔っていた。
そう……ひどく酔っていたのだ。
「こんにゃろ~~~」
ソフィアは岩から降りると、剣が刺さっている岩を睨み付けた。
その目はひどく据わっている。
「にゅけにゃいならこうしてやりゅ~~~」
両手を突き出した彼女は、最大級の攻撃魔法を唱えた。
ドーンッ!!!
辺りに響き渡る爆音。
「へへっ……これでどぉ…だ……」
ソフィアは意識が途切れる直前、賢者の岩が崩れ、聖剣が自分の方に倒れてくるのが見えた。
(やった……zzz)
すっきりして地面に倒れた彼女は、そのまま地面の上で穏やかな寝息をたて始めた。
寝てしまった彼女は知らない。
先程の音で目覚めた町民たちが、何事かと広場に集まってきて騒動になっていたことを。
『聖剣を抜いた者が勇者』とあるが、これは抜いたうちに入るのか?と国で議論がなされ、参考人として王城に呼ばれることを。
【まさかあんな形で剣を手にするなんて、さすがの儂でも想定外じゃ】
賢者の呟きが聞こえたとか……
聞こえなかったとか……
抜けないのなら壊せばいい @callas
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