まあだだよ
まだなわけないでしょう。
とっくにやっちゃってるじゃない、あなたは。
わたしがやらないで、って頼んだことを、もうやっちゃってるじゃない。
帰って来て、って。
そう頼んだよね?
大元の責任者たるべき長兄が来れぬならば、あなたが来て、って。
田舎の、セカンドオピニオンを求めずにはいられないような場末の総合病院で、医師と、ケアマネさんと、介護用のリフォームをする業者さんと、本来の第一義的看護人たる父親と、そして、結婚して外の家に出た本来ならば第三者であるはずのわたしと。
ミーティングした。
「旦那さん。奥様の病気は多分、脳の中のある物質の分泌が極少になることにより幻覚や幻聴を体験するそういう病気だと思われます」
それを言ったのは、ケアマネさん。医師ではなかった。
「・・・先生の前で大変失礼ですが、別の先進的な病院でセカンドオピニオンを受けることをお勧めします」
「おい」
「は・・・い」
「ウチの病院、出入りさせませんよ」
「ですが、わたしは職責として言わないわけにいかないんです」
「言うな」
それを言ったのは父親だったわ。
「ウチの女房がそんな病気だなんて聞きたくない。本人もショックを受けるはずだ」
「変わらないわね」
「なんだと?」
わたしは父親に冷酷に告げた。
「わたしがいじめに遭っていた時と変わらないわね。客観的にあなたたちはわたしがいじめに遭っていることを知っていて、その現場を目撃すらしていてもカモフラしたそれっぽい理屈をつけて臭いものに蓋をした。あるいは自分は全てを知る全知全能で、だからとても深い思考と深甚な判断のもと、何もしないのだと」
「それが親に言う言葉かっ!」
父親は杖を床に叩きつけた。
「先生」
わたしは父親をほったらかしにして、母親の主治医に告げた。
「セカンドオピニオンを受けます。別の施設の整った病院への紹介状を書いてください」
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