声も呑まれる
蒼月ヤミ
第1話 息も呑まれる
目が覚めた。それと同時に、息を呑んだ。
振るような星空とはきっと、これのことを言うのだろう。
すうと喉に入り込んでくる澄んだ空気。さわさわと頬を擽る柔らかい草。灰色に染まった木々の葉の額縁の合間に、藍色を溶かした黒の闇。そしてその闇を切り取る、幾千幾万もの星々。
目から入ったその光景は、喉元を通って胸を躍らせる。
ああ、なんて。
美しい。
手を伸ばせば届きそうで、絶対に届かない何万光年先の景色。それでも無意味に腕を持ち上げる。冷えた風が指先をなぞった。
とく、とくと、いつもより少し早い速度で心臓が走る。
さわさわと木々の葉が擦れる音が、耳に心地良かった。
ああ、こんな世界なら、良いな。
そうぼんやりと思う。
この世の美しさの終りにある、静かな静かなこの光景。
こんな世界が見られたのだから。
もう、良いかな、なんて思う。
持ち上げた腕を降ろして、鼻から深く息を吸い込む。気付かぬうちに雨でも降っていたのだろうか。どこからか湿った土の匂いがした。
満点の星空に包まれて、気付けばまたゆっくりと、瞼が落ちていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます