第58話

 今日は暑かったのである。わたしはお屋敷に着くと制服を脱ぎ、下着姿でウロウロする。流石に恥ずかしいが問題なかろう。冷蔵庫に冷やしてある烏龍茶を飲んでいると、夏と目が合う。わたしは下を見ると下着姿である。平均より小さめの胸は夏に見せるものではない。急いで自室に戻るとトレーナーを着る。夏が相手でも恥ずかしかった。そーっと、ドアを開けて夏がいない事を確認して冷蔵庫の前に戻る。ガタ……むむむ、人の気配がする。姉の愛菜である。


「恋菜さん、なんです、小動物の様な脅え方をして」


 夏ではなかった。下着姿をさらしてしまったので、夏であったら気まずいのである。わたしは首を傾げて、誤魔化すのであった。姉の愛菜は汚いモノでも見るかのようにして去って行く。相変わらず、キツイ性格である。ここは早く自室に戻る事にした。自室に戻るとしばらくして、ノックの音がする。夏である。


「恋菜様、制服をお持ちしました」


 そうか……リビングのソファーに置きっぱなしであった。ドアを開けて、制服を受け取ると。


「夏も着る?」

「残念ですが、胸のサイズが合いません」


 オーダーメイドのブレザーの制服は、確かに夏には小さそうである。わたしは夏のバストをおもいっきり揉んでやろうかと思うのであった。この敗北感はなんであろう……。夏が含み笑いをしてわたしの自室を後にすると。トレーナーを脱ぎ、鏡の前に立つ。残念な胸を見て、揉んでみる。敗者のみが実行するバストアップ術である。微妙な気分だ。諦めて課題でもするのであった。

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