第43話

 雨の中、わたしは登校するのであった。ブルーの大きな雨傘をさして歩く。


「でん、でん、虫、虫……」


 鼻歌を歌いながら歩く。少し冷えるくらいの雨は何故かわたしをごきげんにしていた。そう、雨なのにすごしやすいのは謎である。昨日は化学実験で液体窒素を使った。お嬢さま高校では考えられない授業であった。さて、高校に着いたぞ……。昇降口から中に入ると廊下が濡れていた。気分は真っ逆さまである。

廊下がツルツルの氷の様に滑るのである。はて?お嬢さま高校では考えられない。

わたしは彼を呼びだして掃除をさせる。彼の不慣れな手つきで廊下が綺麗になると、わたしは再び機嫌が良くなる。


「でん、でん、虫、虫……」


 一限目から体育の授業である。雨なので体育館で授業だ。この暑さが終わったころの運動は心地いいのであった。体育の授業が終わり、渡り廊下にある水道で喉の渇きを潤おす。次の国語の授業は寝ることにした。雨降りなので屋上には行けない。保健室も考えものだ。空き教室では目立つし……。図書室に行くか。更衣室で着替えた後に図書室に向かう。


「でん、でん、虫、虫……」


 わたしは図書室の奥の死角で寝る事にした。


『才能の限界だ!』


 隣のブロックから寝言が聞こえる。多分、限界なのであろう。わたしは常備しているクッションを取り出して眠りにつく。数学の授業の十分前に目が覚める。自分でも驚いたが仕方ないので授業に出る事にした。天気は雨のち晴れ……今日は雨の方が心地いいと感じたのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る