第44話

 夕食の時間である。今日は鶏肉のトマト煮である。いつになく気合の夏の入った料理は、とても美味しいのであった。


「今日の料理は美味しくてよ。そういえば、わたし達の誕生日が近いから?」


 双子の姉が夏に問う、そう、もう三日もすれば誕生日である。


「わたくしめの事ですが、今日が誕生日です」


 どうやら、夏の誕生日らしい。


「言ってくれれば、ケーキでも買ったのに……」


 わたしの言葉に夏は照れくさそうにしている。姉はなにかメモを書き始めて夏に渡す。それは有名な洋菓子店への三人分のケーキの注文であった。わたし達の誕生日に夏も含めるらしい。


「愛菜様、ありがとうございます」

「そんな事より、紅茶をお願いするわ」


 姉は凛とした表情で夏に言う。わたしも食後の紅茶を頼むのであった。しかし、姉のケーキの注文の仕方からして、凄いなと思うのである。双子なのでわたしと同じかと思えば全然違う。瞳の色が違うので二卵性なのであろうが……。更に長女となる肩書きが凛とさせるのであろう。わたしは紅茶を飲み終えると自室で鏡に向かう。琥珀色の姉の瞳が羨ましい。わたしの瞳は椿色で残念な気分になる。少し気分転換をしよう。口紅を取り出し不慣れな手つきで化粧をする。


 あーダメだ……。


 わたしは夏を呼び化粧の仕方を教えてもらう。夏の方が幾つ年上だっけと考えるが思い出せないわたしは夏に言われるまま化粧を進める。


 完成だ……。


 鏡を見て色々ポーズを決めてみる。これなら姉に負けない。しかし、夏はわたしに対しての方が優しく接しているきがする。わたしの方が子供なのかもしれない。

劣等感に悩まされる日々であった。

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