第29話

 さて、学校に行くか。日常をつめた鞄を持って、わたしは部屋を出る。途中で同じ高校の自転車を見かける。庶民の高校なので自転車通学の人も多い。わたしは運動が苦手なので、高校までは歩き、バス、歩きであった。バスの中ではお気に入りの小説を読むのであった。


『黄昏よりも暗きもの……』


 古いラノベであった。今のタイトルに直せば『異世界にてJK最強魔導士に転生』になりそうな物語である。ま、そんな事はどうでもいいのであった。わたしはバスを降りると歩いて高校に向かう。白い日傘をさして夏の終わりの風を感じる。

しかし、朝から眠い……。わたしは屋上に行き、ベンチで横になる。ホームルームに出ないでいると学校からメールが届く。


『痴漢に注意』との内容であった。


 わたしは痴漢など出たら蹴り飛ばす自信があった。これ以上は語っても仕方がないのでメールを消す。さて、英語の授業の時間である。家庭教師や塾に通うのは面倒くさいので出席する事にした。最近は外国人の先生が授業をするのでそれなりの魅力はあった。英語の授業が終わる頃には疲れたので保健室で寝るかと思う。


 うん?


 教員控室に手ごろなソファーがあったな。わたしは許可を取り、教員控室で寝る事にした。数学の加藤先生が先客であった。年は45歳、わたしは『ドラグスレイブ』を知っているか聞いてみた。


「あ、あの貧乳魔導士の話ね……」


 それなりに知っていた。やはり、ラノベの古典だけの事はある。語り合うには少し面倒くさい。わたしは小説を渡して、寝る事にした。加藤先生は懐かしそうに読み始めるのであった。

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