Room

Wigglis

Living Room

「...ここは?」

目を開けると、部屋のリビングにいた。

特筆することもない、

ありふれたリビングだ。

いや、「特筆することもない」というのは

間違いだろう。

「何も無い」のだ。

「リビング」という認識だけはある。

だが、テレビや机、椅子、棚など

生活に必要であろうものが、何も無い。


そう、まるで引越す前の家の様で───


「...っ」


これ以上はやめよう。

苦い思い出が蘇るだけだ。

そもそも、なぜこんな所にいる?

昨夜はお酒を飲みすぎたせいで、

記憶が酷く曖昧なのだ。


そもそも今は何時だろう。

ポケットに入れたスマホを取ろうと───

「あれ?」

ない。スマホがない。

まずい。どこかで落としたか?

昨日酔っていた時に落としたのだったら

完全にどこに行ったかわからないぞ。


「.....しょうがない。探しに行くか。」

探しに行くのは面倒なので迷ったが、

この部屋にいるのは何となく嫌だ。

それなら外に出た方がマシだ。


外に出ようと、ドアを開けようとすると...

「?」

おかしい。ドアノブがない。

これでは外に出るのは不可能だ。

「一体なんなんだよ.....」


何かがおかしい。これは夢なのでは?

そう思うと、これまでの不可解な出来事が

全て「夢だから」という理由で納得出来た。


そうだ、これは夢だ。

だから、いい加減夢から覚めよう。

そう思って、


「これは夢だ!」


と言い続けるが、

一向に夢から覚める気配がない。


「はぁ.....」

ため息をつき、なんとなしに部屋を見渡すと

カレンダーに目が着いた。

12月18日に大きく丸がついている。


「.........」


そこに目が寄せられる。

忘れるはずもない。

この日は、兄の命日なのだ。


「兄さん.....」


そう言って、俺は昔の記憶を思い返す───










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