春の葬列
桔梗晴都
第1話
私には、死にたがりの幼なじみがいる。
見た目は物腰が柔らかそうで、口調もおっとりしているため優しそうな印象の少年だが、口を一度でも開けばどうやったら苦しまずに死ねるかなどを聞いてくる変わった奴。しかし黙っていれば男女問わず優しく、頭もいいため人に教えているところをよく見かける。それに加えて表情があまり変わらないからなのか、少しミステリアスと思われていて、そこがいいという女子にモテる。ただし、彼の死にたがり具合を知らない人に限るが。
そんな周りからいろんな印象を抱かれているあいつだけど、あいつは別にミステリアスなわけでも、優しいわけでも、元から頭が良いわけでもない。
あいつは考えていることが分かりやすいほど顔に出るし、心を開いた人には少々毒舌なところもある。頭が良いのは、上の兄のように両親に一度でも褒めてもらいたいからだ。いつも遅くまで起きて勉強しているところを私は何度も見ている。
あいつは努力家だ。だけど陰でして表には絶対に努力の欠片も見せたがらない。努力家だけどプライドは高い方だと思う。人は皆あいつを「天才」だと呼ぶが、私から見れば人一倍努力しているだけの面倒な奴だ。
人一倍承認欲求が強い癖に、親に努力を認めてもらえなくてもただ笑っているだけで、結局一人で泣いている。私が自殺しようとしているところを止めると、口では文句を言いながらも嬉しそうにいつも口の端を緩める。あとナスが嫌いだったりニンジンが嫌いだったりなどと単純に好き嫌いが多い。
あいつは、皆が思っているほど出来ているわけでもなければ、神様から才能をもらった「天才」でもない。
物心ついた時から私と真は一緒に居た。そのためか、お互い分からないことなんてなかった。今までは。
だけど、あいつが自殺をしようとする理由が今の私には分からなかった。
いつも助け合ってきた。支え合ってきた。私たちには、互いがすべてだった。それを否定するかのように、今日も今日とてあいつは自殺を考える。あいつにとって、私はどうでもよくなってしまったのかと不安になる。そんなことはないと首を振る。
だけど、心はもしかしたらと不安ばかりを描いていく。一番あいつを信じているようで、一番信じていないのは私だと嫌でも再認識させられてしまう。
「私のこと、もうどうでもいいのかな」
吐き出す不安は、暗い部屋に水が地面に滲みこんでいくかのようにゆっくりと消えていった。勿論、私の疑問に答える人など誰もいなかった。
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