第8話 基礎魔力量測定
二日目の授業は魔法剣術基礎から始まった。今日は昨日と同じように一度教室に集合するように言われている。
「さて、今日は魔法剣術を使うにあたって、大事な素質、基礎魔力量の検定を行う。今回は修練場ではなく機材棟に着替えず十五分後に集合するように。」
生徒たちは特に準備するものも無いため、全員が機材棟に直行した。機材棟の前には相変わらず仕事がものすごく速いダグラス先生がいた。
「お、早いな。まだ言っていた時間の三分も経ってないが。まあ全員が集まったならもう始めようか。」
そういって先生が建物の中に入ってくので全員でついていく。しばらく白く長い廊下を進んでいくととても大きな部屋についた。
その部屋には大きなパイプオルガンのような形をした計測装置が置いてあった。その装置のすぐ前に剣が地面に刺さっていて、それを握りこみながら先生が話し始める。
「今から基礎魔力量の測定を始める。今俺が握っている剣にありったけの魔力を注ぎ込め。」
先生が説明しながら自分でもやってみる。すると赤い光がメーターの中で上がっていき、十本あるうちの二本目の真ん中あたりで止まった。
「こんな風に、測定者が込めた分だけ、その人間の属性の色と同じ色の光がメーターに表示される。一般人がこのメーターを使っても一本目の半分にも満たないだろう。とりあえず君たちに求める俺の理想はそれを超えることだな。それじゃ自信のあるものからどんどんやってくれ。」
すると、何人かの女子に押されながら、例の四大貴族の女の子が前に出ていく。
「…私、一番にやってもいいですか?」
「フォレストか、いいぞ。」
そうしてそのティア=フォレストという女の子は剣を握る。しばらくすると緑色の光がメーターの四本目にぎりぎり届くかというところまでいった。
「おお、すごいな!魔力量だけで言えば上級魔法剣士と並んでいるぞ。」
『さすがはフォレスト家のご子息ですわ!』
周囲からの声も上がり、彼女は少し恥ずかしそうにした。
「さて、次は誰が行く?」
そのあともどんどんみんなが計測していき、先生がそれを記録していく。そんな中、フェリルはその計測を誤魔化そうとしていた。
というのも、フェリルは知っていたのだ。自分の魔力量は現代ではありえないレベルのものであることを。
以前、レイラに簡易的に魔力量を計測してもらったのだが、軽くレイラの魔力量の十倍はあると言われたことがあった。
レイラがこの世界でもトップレベルの魔力量を保有しているのに、その十倍と言ったら、正直化け物としか言えないだろう。
ということでここでは平穏な学院生活を送るためにこのことは隠しておかなければならない。そのため、この計測は何とかスルーしたい。
「よし、これで全員の計測は終わったな。それじゃ戻ろうか?」
「先生、まだだれかやっていない気がするんですけど?」
「そうか?」
クラスの二十九人がきょろきょろし始める。あらかじめシャノンには事情を話してあるため驚いた様子はなかったが、みんなに合わせておかないと怪しまれるため、探しているふりをしていた。
何とかこの場面を乗り切ろうといろいろ考えていて、顔が青くなっていたフェリルはティア=フォレストと目が合ってしまう。
彼女はフェリルのことをみて、一瞬何か怪しいと思ったのか目つきがっ鋭くなったが、すぐに元の顔に戻る。
「先生、たぶんみんなの計測は終わりましたよ。」
「そうか?フォレストが言うのならばそうなんだろう。それじゃ、今日の授業はこれで終わりだ。全員疲れただろうし、午後の授業もすべて今日は休講にする」
『ありがとうございました!』
そうしてみんなは機材棟を出て各々の行きたい場所へと散っていった。みんなが動いているところにまぎれてティア=フォレストがこちらに近づいてきて、すれ違いざまに小さなメモを渡される。
❛今日の四時半 教室 一人で来るように❜
…どうやら平穏な学院生活はまだまだ遠いようだ。
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