霊狼の魔剣士 

達磨樽磨

序章 始まるモノガタリ

第1話 エピローグ

 我々現代人が生きている世界とはまた別の世界、ウェントワース。その世界ではありとあらゆるものに魔法という超常現象を利用して生活していた。


 しかしある時突然、詳細不明の現象により人々の持つ魔法を扱うためのエネルギーである魔力という物が急激に減少してしまった。この出来事により、それまで発展していた魔法文明は大きく衰退してしまったのであった。


 そこで魔法文明に替わり、この十数年で科学文明が発展し、何とか人々の生活水準は以前の魔法文明と同レベルかそれよりも高いものになっていた。


 一方、戦闘ではいまだに魔力を使った方法をとっている。しかし、以前までのような魔術戦などではなく、より効率が良く、現在の人類でも運用可能な方法である魔法剣術が主流となった。


 魔法剣術では、魔法とは異なり魔力を顕現させ形状を維持するために魔力を消費する必要がないため訓練さえ積めば誰にでも扱うことができる。


 魔法剣術が戦闘の主流になるにつれてそれぞれの魔法属性に沿った流派が生まれ、流派の代表は自分の流派に優秀な人材を取り込もうと世界中を探し回っていた。

~~~~~


 とある山奥の森の中で、錆びついた二本の剣を両手に持ち、それぞれ違う光を纏わせ魔物や猛獣を狩っている少年がいた。


 その少年はボロボロの服を着ており、もはや服よりも襤褸切れといわれたほうが納得できるものを身に着けていた。


 住む家もなく、獣のように土の上に寝て、ほかの獣や魔物を自分で狩って食べている。時には魔物すら食していた。


 その少年は近くの村で噂になることもよくある。


「あの山、獣みたいな人間が暴れてるんでしょう?」

「あれは人間じゃないでしょ。鬼か化け物だわ。」

「怖くてうちの子にもあの山には近寄らせられませんもの。」


 といった風に。以前、その村の人の通報で魔法剣士が少年を捕縛しに来たのだが、ことごとく返り討ちになり、倒された魔法剣士たちはみんな剣だけ取られて村の入り口に寝かされていた。


 その事件があってからは魔法剣士たちも村の住民もその山と少年に一切近寄らなくなった。


 しかし、雪が降り積もる冬のある日、少年が生活している山に一人の女魔法剣士がやってくる。


 その女魔法剣士は桃色がかった美しい銀髪を腰の少し上あたりまで伸ばし鏡のような綺麗な銀色の目をしていた。腰にはきれいに磨かれた真銀ミスリルのレイピアを携え、そのほかの防具などは身に着けていない。


 その女魔法剣士は彼と相対すると問答無用で斬りかかっていった。彼も少しも遅れることなく反応する。彼女の二連突きに二本そろえて横なぎに一閃し弾く。彼の乱舞を踊るようなステップで躱し、鋭いカウンターを繰り出す。それを剣を交差させ受け止める。


 互角な戦いを二人は一時間も続けた。それに女魔法剣士はかなり驚いていた。


「君、言葉は話せる?」


 突然、女魔法剣士が話しかけたので少年は少しビクッとしたが返事をする。


「…話せる。」


「そうか。ならもうそろそろ止めにしないか?私の目的はもう達成したんだが。」


「わかった。やめる。」


「そうしてくれて助かるよ。私は君に会いに来たんだ。」


「そのわりにはめがこわかった。」


「まあ、こちらの目的は君がどれくらいのものか実際に戦って確かめることだからね。そこらへんは許してくれ。」


「おもしろかったからゆるす。」


「っふふ、君ほんとにおもしろいな。」


 少年の返答に思わず笑ってしまう彼女である。


「そこでだ。君、私と一緒に来てくれないか?」


「おれをつかまえる?」


「いーや、そうじゃない。私の弟子として君を迎え入れたい。」


「でし?」


「私が君に技やら力の扱い方やらを教えてあげたいということだ。」


「…いく」


「そうか、それじゃあこれからよろしくな。えーと、名前聞くのを忘れてたな。なんていうんだ?」


「しらない。ずっとひとりだったから。」


「そうか…じゃあ、いつか君にも名前を付けてやらないとな。」


 そうして二人長い長い道を進んでいった。


顕現

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