褐色ロリの許嫁が押し掛けてきた話。
江田・K
プロローグ
古くて狭い1DK。
ふたりで過ごす朝は慌ただしい。
しかも今日は俺が寝坊したから余計にだ。
小さな窓から差し込む朝日に銀髪をキラキラと煌めかせている彼女に、バタバタしている俺は一喝される。
「浩一郎さん、それ昨日と同じネクタイですヨ!」
よく覚えてるなあ。
「同じじゃ駄目かな?」
「営業職は身なりをキチンとしているのが肝要、と日下部さんが仰っていましタ!」
「……ルゥさん、最近日下部さんと仲良いよね」
「はい! 色々教えてくださるのでス!」
ちゃぶ台代わりのローテーブルの上には焼きたてのトーストとコーヒー。彼女が準備しておいてくれたものだ。大変ありがたい。
「いただきます」
と手を合わせて急いで食べながら、
「ルゥさんは先に出ていいよ!」
と声をかけた。
気を遣ったつもりだったのに、
「はあ?」という顔をされた。声には出てないのに伝わる、信じられないものを見るような目で見られた。
「私は途中まででも浩一郎さんとご一緒したいんですけれド!」
褐色の頬を赤く染めての抗議に俺は謝るしかできない。
「ご、ごめん」
「そろそろそれくらいはわかってくださイ!」
「す、すみません」
「この件は日下部さんに報告しておきますからネ!」
「げ。それだけは何卒ご勘弁を」
十五歳年下の彼女に最近めっきり頭が上がらない。
出社と登校の準備完了。
俺は会社へ、彼女は学校へ。
狭い
造り付けの靴箱の上には古びた写真が二枚飾ってある。
一枚は集合写真で、もう一枚はクソガキの写真だ。
集合写真はふたりの合意で、もう一枚はルゥさんの希望で飾っている。
俺と彼女のはじまりの写真だから、だそうだ。
ふたりで集合写真の方に挨拶をして家を出た。
「「いってきます!」」
俺と彼女との出会いはずっとずっと過去まで遡る。
これから話すのは――、俺たちの出会いと再会と約束と、選択の物語だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます