不死の龍と孤独な少女

天ヶ瀬翠

Nth prologue

「早く来ないかなぁ、私の王子様」


 少女はいつも一人で過ごしていた。

 黒の髪の間から除く灰色の目が、雲一つ浮かんでいない空虚な空を見上げている。彼女は物心ついた時から、いつ来るか分からない何かを待ち続けていた。


 少女はガラクタに囲まれて生きていた。

 ページが途中から無くなった本や、錆びた金属片、底のない瓶に破れた布など。まるで子供が遊び飽きたおもちゃような、煩雑とした散らかりようだった。


 少女は森の中にぽつんと立つ、釣り鐘型の岩山に住んでいた。

 岩山の周囲だけ砂地になっており、一匹も生き物がいない。地上だけでなく、岩山の上空には鳥一羽も飛んでいなかった。


 少女は今日も岩山の横穴から、東の空を見ながら何かを待つ。


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