とけゆく想い

渡辺翔香

プロローグ


「ねぇ、お願い。

早く呪いを解いて頂戴……」


 私がそう言うと、彼は頭を振った。



「嫌だ。君が消えてしまうくらいなら、いっそ……」


 純粋で、真っ直ぐな瞳を向ける彼。


 そんな瞳を持つ彼を私は少しだけ羨ましく思った。

 しかし、そんな想いは胸の中に押さえ込み、私は彼を戒めた。


「ダメよ。貴方は勇者なんだから。

世界が消えてしまう前に……私の呪いを解いて頂戴……」


 私はそう言って胸に刺さる剣を指差した──……。

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