ドライブ
落合が良子に気がついて聞いた
「ええ、まあ」
「團にも彼女いたんだ」
亮に好意を持っていた美咲は良子を見て落ち込んでいた。
そして、その日の試合をすべて勝った
亮は翌日の試合を辞退した
「明日の試合、出場しないの?」
美咲が亮に聞いた。
「すみません、明日は用事が有るので」
「せっかくベスト16になったのに、もったいない」
「すみません」
亮が着替えをして戻ってくると良子が待っていた。
「秋山さん、明日は時間有りますか?」
「ええ、大丈夫です」
「じゃあ、軽井沢へ行きませんか?」
「はい」
良子は亮と初めて遠出をするので嬉しかった
「じゃあ、明日7時に大泉の自宅に迎えに行きます」
「うん、場所は・・・」
「知っています」
「えっ?」
翌朝7時時前に良子が外を見ると
シルバーのポルシェが止まっていて
亮が外に出ていた
「うふふ」
良子はそれを見て玄関から出ると
亮は深々と頭を下げた
「おはようございます、迎えに行こうと思っていたんですけど
5分ほど早かったので」
「ありがとう」
「ああ、ご家族に挨拶は?」
「うふふ、いいのよ。まだ寝ているわ」
「そ、そうですか?」
亮は慌ててポルシェのドアを開けた
「素敵ね、この車」
「父のです。父はカーマニアで年甲斐も無く」
「いいえ、ポルシェ乗れるだけでも嬉しいわ」
亮は車を走らせると良子はポルシェのである
優越感とスピードに酔っていた。
「スポーツカーって若い人向けの車なのに
高くて若い人じゃ買えない
なんか変ですよね」
そう言った亮は高田に対する嫌味のような気がした。
「うふふ、そうね。そう言えば高田さん警察に捕まったみたい」
「えっ?どうして」
亮はその事を知らない振りをした
「偽ブランド品を売っていたそうよ」
「そうだったんですか、偽物を・・・」
「ええ」
「商標法違反ですか、罰金が重いですね」
「そうなの?」
「ええ、売った数と金額によりますけど実刑かもしれません
そしてブランドの会社が民事で損害賠償を請求してきます」
「詳しいのね」
「父は仕事、偽ブランドには気を使っているんです、
偽ブランド撲滅委員会の理事もしていますしね」
「そうなんだ」
「ブランドって何人もの努力と才能と歴史で築かれて
来たものなんです、それを何の努力もしないで
同じ名前を使って儲けるなんて許せません」
亮はブランドバッグを分解してそれを確信していた。
「そうね、そうよね・・・」
良子は窓から外の風景を見ながら
次第に笑顔になっていった。
「吹っ切れたのかな」
亮は良子の元にさわやかな春の風が
吹いて髪がなびいて見えた・・・
「あっ、送風口からの風か・・・」
亮が呟いた。
「うふっ、緑がたくさん、素敵ね。軽井沢」
良子は高田の事を吹っ切って亮と付き合う事に決めた。
しかし、徹にキスされた唇が時折ピリピリと感じていた。
「うん」
2時間あまりで着いた所は軽井沢の雲場池の傍の
2階建ての洋風の家の前だった。
「わあ素敵、別荘?」
「うちの管理する、和漢方園です」
玄関のチャイムを鳴らすと40代半ばの女性が出てきた。
「ああ、亮坊ちゃま」
「こんにちは多恵さん」
亮は良子を紹介した。
「ああ。亮様のガールフレンド?緑川多恵です」
「秋山良子です」
良子は多恵に挨拶をすると天井の高い洋館の中を見渡した。
「多恵さん、五郎さんは?」
「漢方園の手入れをしています」
「そうですか、秋山さんちょっと行きましょう」
亮は良子を誘って家の向こうに出ると広大な畑に
五郎が手入れをしていた。
「五郎さん」
亮が大声で手を振った。
「ああ、亮さん」
五郎がタオルで汗を拭いて戻って来た。
「五郎さんお疲れ様です」
「わざわざ遠い所をありがとうございました」
「どうですか?新しい畑は」
「順調です」
「あっ、友人の秋山さんです」
亮は五郎を紹介した。
「そうですか。お茶でもいかがですか?」
五郎が良子を誘った
「秋山さん、おいしいハーブティを飲みましょう」
「はい」
亮と良子はテラスに座ると
多恵がハーブティを持ってきた
「おいしい」
「ここでは祖父の代から漢方の実験農場なんです」
「それで軽井沢の研究所って言っていたのね」
「はい」
その後亮は、しばらく五郎と新しい
漢方の木植え付けの話をしていた
~~~~~~~
「良子さん、もう一杯いかが?」
多恵がハーブティを持ってきた。
「亮さん面白い人でしょう、と言うより変な人かな」
「うふふ」
良子はそれに答えず微笑んだだけだった。
「亮さんは小学校の時から夏休みは
ずっとお爺様とここで過ごしていたのよ」
「亮さん、お爺さん子だったんですね」
「ええでも、お爺様は厳しくて朝6時から猛勉強させられていたわ」
「そんなに?」
「夫の五郎は植物学者で亮さんの先生もしていたんですよ」
「ああ、それであんなに親しいんですね」
「ええ、それに夫はお父様のお陰で
植物関係の本を出版出来たんです」
「すごいですね」
~~~~~~~~
「秋山さんお待たせしました」
亮は申し訳なさそうに言った。
「いいえ」
「五郎さんと新しい薬草を植える話をしていたんです」
「多恵、亮さんは凄いよ、糖尿病と白血病のための
漢方薬草の調合を考えているんだよ
大学の教授も認めてくれたそうだ」
五郎は嬉しそうに多恵に話をした。
「白血病?」
良子は亮の顔を覗き込んだ。
「ええ」
亮は顔を曇らせた。
「そうか、沙織の病気」
「はい・・・・」
良子は亮がまだ沙織の事を思っているのを悲しく思った。
「五郎さん、また来ます」
「もうお帰りですか?」
「ええ、この後鬼押し出しを抜けて白根山を周って帰ります」
「そうですか、せっかくだから泊まって行かれれば良かったのに」
五郎が残念そうに言うと亮は何も考えずに返事をした
「いいえ、秋山さんが一緒ですから」
「あっ私は別に・・・」
良子が呟く声は亮には聞こえなかった。
「秋山さん、お土産にローズヒップ」
多恵から良子が受け取ると驚いていた
「こんなにいいんですか?」
「うふふ、綺麗になるわよ。がんばって」
「ありがとうございます」
そう言われて見ると多恵と夫の五郎は肌の色艶が若々しかった
亮はたっぷりの漢方をトランクに積み込むと
二人に別れを告げ走りだした。
「お二人で暮らしているんですか?」
「いいえ、平日はニ、三人働いています。広いですからね」
「そうなんだ」
「秋山さん、軽井沢は名所が少ないので白根山へ行きましょうね」
「はい、でももう帰ってしまうのにはもったいないなあ」
「そうですか?」
亮には良子の誘いが分からなかった。
「そうだ、あの研究所にはリスリングルームが
あって祖父のコレクションの
レコードとCDが有るんですよ10000枚くらい」
「すごい、レコードが聴けるんですか」
「ええ、すごくいい音です。やわらかくて、今度聞きましょう」
良子は亮の遠まわしの誘いが嬉しかった。
「どんなジャンルのレコードが」
「クラッシックとジャズばかりですよ」
「そうか」
「同じ曲でも、オーケストラと指揮者と
録音場所でずいぶん違いますよ。カラヤンは
ベルリンのイエス・キリスト教会を好んで
録音場所にしていたそうです」
「詳しいのね」
「クラッシクは脳の発育に良いと言われて、
勉強をしながら聴いていました」
「そうなんだ」
良子は亮の家がかなりスパルタ教育だったと
聞いて何か親近感があって嬉しかった。
二人は日本ロマンチック街道を万座スキー場へ
向って走り白根山で降りた。
「素敵だったわ」
「秋山さん、草津で野沢菜漬けを買って温泉饅頭を食べましょう」
「うん、團君甘党?」
「ええ、普通に食べますよ、あんみつやおしるこ」
「どれくらい食べるの?」
「毎日」
「うふふ、それが甘党って言うのよ」
「あはは、僕甘党なんだ」
亮は本当に自分が甘党だって知らなかった。
二人がドライブから良子の家に戻ったのは夜の9時前だった。
「團君はいつも時間通りなのね」
「えっ?何が?」
「たまには遅くなってもいいのよ」
「いいえ、僕達はまだ学生です。親に心配を掛けてはいけません」
「ふう」
良子は相変わらず硬い亮に溜息をついた。
「團君、今日はありがとう」
良子は突然亮に抱きついてキスをして車を降りていった。
「あっ」
亮は自分の唇を通して心臓がドキドキするのが分かった
そして、もう一度その感覚を味わいたかった
やわらかくて温かい良子の唇を・・・
「これが秋山さんとのキスか・・・」
亮は家に帰る途中ずっとそれを思い出しながら
車を運転していた
亮は何かが喉の奥に詰まったような
胸が苦しいような気分のなっていた
それから亮と良子は徐々に心がつながっていった。
~~~~~~
それから間もなく良子は弓子たちと飲みに言った
「良子、團君と何処まで進んだ?」
弓子が興味深く聞くと自慢げに答えた。
「うん、この前連休に二人で軽井沢へドライブに行ったわ」
「へえ、それで?」
「亮の別荘に泊まったわ」
良子は見栄を張って弓子に嘘をついた。
「そうなんだ」
弓子は二人の関係が深まった事にショックを受けたが
亮が欲しくてたまらなくなっていた。
「後は私と良子とのお互いの魅力しだいだわ」
もし、亮と良子が深い関係になっていたら
亮がこの場所に来ているはずで
良子の見栄だと確信し、弓子は亮をあきらめなかった。
「徹、良子の事どう思う?」
弓子は徹と小声で話をしていた。
「いい女だと思うよ」
「やっちゃいなよ、まだ彼氏とやっていないみたいだから」
「そうか。あっちのテクには自信があるから、いい薬持っているし」
「喜ばせて上げなよ、そろそろ欲求不満になっているはずよ」
「よし、彼女のお酒に薬入れちゃおうかな」
「でも今日は止めて。今度海に誘うからその時に」
「OK」
徹は舌なめずりをした。
徹はお酒を飲んで酔っている良子の
太ももを触ったり肘で胸を押したり
良子の体中を刺激して
終いには、良子の肩を抱いて飲んでいた。
そしてまたトイレの前で良子にキスをすると
今度は良子はそれを拒否せず、逆に舌を徹の口の中に入れた。
徹は良子を感じさせるために胸を下から揉み上げた。
トイレから戻った徹は弓子の耳元で囁いた。
「今、キスをしたら舌を入れて来た」
「うふふ、さすが徹ね」
弓子は笑いを抑えるのに苦労していた。
~~~~~~~~~
7月の15日大学が夏休みになろうかと言う寸前
亮と良子は有楽町で映画を観た。
「團君、弓子に伊豆に誘われているんだけど」
「そうですか」
相変わらず亮の返事は冷たかった。
「一緒に行かない?」
「ごめん、僕は海へは行かないんです」
「どうして?泳げないの?」
「いいえ、祖父に海で遊ぶのは禁止されていたんです
事故が多いので」
「それなら日光浴だけでもすればいいのに、
日焼けした方が男っぽくてかっこいいよ」
「そうか確かに健康的だけど、今年は軽井沢から出られないんです。
逆に弓子さんを誘って軽井沢へ遊びに来てください」
「いいの?」
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