旦那がメガネになりました

折原さゆみ

第1話

 私の旦那が死んだ。死因はメガネによる窒息死。だが、旦那はまだ生きている。私を一人残して成仏はできなかったらしい。私のメガネに憑依して、現在は私と共に生活している。私のメガネとなって。


 私と旦那はどちらも近視がひどく、メガネかコンタクトなしでは日常生活を送ることはできない。私はコンタクトをしているが、旦那はメガネをかけていた。


 私は目が悪く、メガネをかけることもあるので、メガネをかけている人を見て喜ぶメガネフェチの気持ちはわからない。メガネは重いし、すぐ曇るし、好きではない。

 だが、旦那のメガネ姿を見てメガネフェチの気持ちがわかった気がした。メガネをかけている旦那は知的でクール。メガネをかけていなくても、知的でクールのイケメンなのに、メガネをかけると、さらにイケメン度が増すとは知らなかった。旦那限定でメガネフェチになりそうだ。


 なぜ、私がこんなにメガネについて話しているかというと、メガネによって、人生が変えられてしまったからだ。




 その日、旦那はメガネを新調したいと言って、メガネ屋に出かけた。私もちょうど新しいメガネを注文していて、今日ぐらいに出来上がると聞いていた。どうせなら一緒に行こうと誘ったが、旦那は一人で出かけてしまった。ここで旦那を引き留めて一緒にメガネ屋に行けば、それとも今日はメガネ屋じゃなくて、他の物を買いに一緒に買い物に行こうと誘えば良かったのか。


 どちらにしろ、一人でメガネ屋に行かせるべきではなかった。そのせいで旦那は事件に巻き込まれ、死んでしまったのだから。




 事件は旦那がメガネ屋にいるときに発生した。家事を終え、メガネ屋に私も行こうと準備していると、不意に電話が鳴った。番号を確認すると、知らない番号である。一応、電話に出る。


 すると、相手は私が旦那の妻なのかを確認してきた。なんと、相手は病院からだった。「はい。そうですが」と答えると、相手は旦那が緊急事態だと伝えてきた。私は急いで旦那が搬送された病院へ向かった。とんだ災難だ。緊急事態とはいかほどか。ついさっきメガネ屋に送り出したばかりなのに。

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