第5話 一人

一人

一人なんだ 本当に一人なんだよ


触れる温もり 暖かさ 笑顔

救われた事は沢山あった

でも それはいつか消える

結局 消えてしまう

守りたかったのに守る力なんてなくて

それでもいいよ、お前は優しい子だからって

抱きしめてくれた人の温もりさえ

いつ消えるかわからない


きらきら きれいなもの

いつかなくなるから 嫌いだった


強くなれたらよかった

守りたいものを守れるくらい

愛した人を離さないくらいの強さを、持てたら


一番大切だった人に

私は言えなかったんだ

君は病気で子供がつくれない

だからって言ったあの人に


なんで泣きながら「そうだね」って諦めた?

離れた手を 遠ざかっていく背中を

追いかけなかった?


無様でも言えば良かった

「子供がいなくても、私は貴方と一緒にいたら幸せなんだよ。

貴方のことも誰といるより幸せにしてあげるから。誰より幸せな、無敵の二人を目指そうよ。」



プライドが

世間体が

羞恥心が


なんだっていうんだろう。


もっと粉々に砕かれたって、たとえもっと酷い言葉を投げつけられることになろうが、

言えば良かった


「アンタのことを愛してるんだよ」って


言えば良かったんだ。


……もう


あそこまでの


情熱は


持てない、な。


一人だ。きっと一人で、私はどんどん寂しい場所へ向かう。


今はまだ優しい人たちを順番通りに見送ったら


もう。私にはそれしか残っていない。


一人。

一人だ。

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