第3話 私が死んだら

私が死んだら周りはどうなるんだろう


母は、私が死んだら二度と笑わないと言った


でも待って。

――ああ、なんだ私が死んでも、母は父と笑っているじゃないか


私は安堵する


と思った次の瞬間、想像の中で母は突然泣き出した


真世が死んだら笑わないって言ったのに、今、私は笑った。

そう言って、自分を責める。


死なないでって、何度も言ったのに、笑わないって何度も伝えたのに、どうして貴女は死んでしまったの!


……。


私の親友は私が死んでも変わらない毎日を生き続けると言っていた


でもマメな彼女は命日には多分私の母に優しいメールをしてくれるのだろう

小さな花も供えてくれるかもしれない

彼女の息子たちに、花を飾る理由を聞かれたら「大切な友達のためだよ」と、言ってくれるかもしれない


だけど前に、彼女の夢を聞いたとき

「福ちゃんとおばあちゃんになって隣でお茶を飲むことだよ」と言っていたのに

私はその約束を破ることになる


……。


私が作ってあげた、知人の小さな会社のホームページはどうなるんだろう


レンタルサーバーのIDやパスワードは渡してあるからいざというときは、良心的なところを探してくださいと言ってはあるけれど、きっとうんと困るんだろうなぁ。


……。


私が病気になっても、社会人で無くなっても、見放さず、つかず離れず付き合い続けてくれている友人たちは私が死んだらどう思うんだろうな


Sちゃんは多分私の訃報を淡々と皆に伝えてくれるんだろうな


疎遠になってしまった人にもきっと私の死が伝わって。

それで泣いてくれる人もいるだろうか


今なんだかんだで一番やりとりをしているHちゃんはものすごく怒りそうだな

お葬式にもお墓にも来てくれないかもしれない


YちゃんはそんなHちゃんをなだめながら一緒にお酒を飲むんだろうな


……。


私のたった一人のきょうだいはどうなるんだろう

想像がつかない。

自分の家庭も持っているけれど、

実家や私のことを本当に大事にしてくれる

優しい、けれど、どこかもろいところのある、私のきょうだい。


いつの間にか私はたくさんのえにしに結ばれてがんじがらめになっていた。


死ねないなぁ

これじゃ

死んじゃいけないよなぁ

これじゃ


そうして 私は薬を飲んでこんこんと眠る

そうして また 重たい朝がやってくる

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