高虎のショートショート

高虎

決意


兄が難病を患った。

自分の免疫が自身の筋肉を攻撃し、筋力が落ちていってしまう病気らしい。

ダーツが投げられなくなり、違和感を持ち、病院に行くと、即入院させられた。

日に日に弱り、遂に握力は4となった。

食事をするのにお箸を使うのも困難だという。

普段はおちゃらけた兄がいつになく真面目な顔つきで私を見つめた。

母さん達を頼む。

マンガやドラマでしか聞いたことのない言葉。

一瞬の沈黙が空気を張りつめさせる。

縁起の悪いことは言うなよと普段のジョークと同じように笑い飛ばすが、心は晴れやかでない。

兄はまだ20代半ばである。

とてもではないけれど、その場でうんと返事することができなかった。



2週間が経ってしまった。

覚悟はできた。

否、せざるを得なかったのだ。

気持ちを整え、意を決して病室へ入る。

兄はベットで仰向けになり、天井に向かって腕を伸ばし週刊少年誌を読んでいた。

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高虎のショートショート 高虎 @takatoranari

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