自力で神になれば神でも文句は無いでしょう?〜聖剣使いの国堕とし〜

零R

第1話 第一世界線 スランタル


この世は残酷なものです。


チャンスがあっても、努力をしても、

人間には限界があります。


できないものはできない。


なれないものにはなれない。



では、神なら?


神なら人間を、なれないものへ、進化させてくれるのでしょうか?


 例えば、そう、「神」なんかに。



ーーー


調子にのった。できると思った。

前はダメでも、今なら。

なんとかできてしまうんじゃないかと。

作戦も立てた。念入りな下準備もした。

だがうまくいかなかった。

運がなかった。能力がどうしても欠如していた。

ただそれだけの事で。

二度めのチャンスまで棒に振った。


「助けてくれ!なあ!?聞いてるんだろ!?

頼むっ!このまま死んだら、僕は何のためにこの…」



言葉がそれ以上続くことはなかった。

彼の体が膝から崩れ落ちたからだ。魔法と呼ばれる、超常、地球にはない力によって。



ここは魔法の国。

かつて付けられていた名は、「スランタル」。

この国は、3ヶ月前に起きた反乱者によるクーデター、

「エンデの悪夢」により、政府が崩壊。


主犯格の1人が王と、否、『神』と名乗り君臨した。


起源であり終わり、


個にして全、


いずれ起きるであろう「聖戦」の地であった。

 

そして、これより紡がれるのは、『エンデの悪夢』へ至る起源、全ての始まりの物語。



ーーーーー



 何かを成したい、そう思ったことはある?

ボクは少なくともそう思ってる。

何かを残して死んでやりたい、名前を残したい、って。

輪廻転生なんか信じちゃいない。

 人間は死んだら土に還って、そのまま意識なんか消えてなくなる。

 だから、少なくともボクは、何かを残して死んでいきたい。


だからといって。


現実が変わるわけでもないんだけどさ。


特技もなく、生まれがいいわけでもない、学校も良い場所ってわけじゃない。

少ない友達とアニメについて話して、いつも通りだらだら授業を受ける。


そんなよくある毎日。


本当に、ありふれた、よくある、毎日。


…のはずだった。


違和感に気づいたら後はすぐだった。


ボクの日常と呼べるものは壊れ、ずっと望んでいた、魔法があり、能力があり、仲間がいて…


そんな世界にボクは行くことができたんだ。



 事は学校から帰ってすぐのことだった。

いつも通り、夕飯までの時間をソシャゲでもして費やそうと、接続の悪い充電器のコードをクネクネしながら、スマホの通知をチェックしていた。


「…ん?」


違和感にはすぐに気付いた。


メールに着信、"1"。


……先に言っておくけど、別に親や妹から来る可能性もあったし、ネット友達からって可能性だってあったんだけどね?


「差出人不明…件名…プレゼントぉ??」


あ、これはウイルス入る系だ。

 流石にボクもこんなのに引っかかる程バカじゃない。

 だが、こんなの残してたらいつうっかり押してしまうか分かったもんじゃない。

 とっとと消そうと、横にスワイプし、ゴミ箱ボタンを押そうとする直前、考え直す。


(ここまでのバカなメール、内容くらい読んでやろう)


なーに、リンクを踏まなければ問題はないだろう。


迂闊にもそう思ったボクは、中身を開いた。


〜当選のお知らせ〜


拝啓、敬虔なる我が僕よ。

神から、土地のプレゼントだ。

好きに使うが良い。

だが、もし使うのなら。

其方には2つの条件を飲んでもらう。

この条件は絶対遵守。

死以外での契約違反は認められない。

それに同意するならば。

来るが良い。高みへと。


誓約


1.私は第一信徒となり、我が世界を統治します。

2.神の御前以外では神にまつわる記憶の一切を封印いたします。



……とまあ、こんな感じだ。


中二病が送る先間違えましたって感じだ。

てかリンク1つもないし。

同意したくても押すとこすらない…



……あほらし。


「おにいちゃーん!ごっはんだよーー!」


一階から、妹の奏音の声が聞こえてきた。

しまった、もうそんな時間だったとは。



(よし、ご飯食べて忘れるか)



一時間後。



(さっきのメール、何だったんだろうなあ…)


やっぱり、忘れられなかった。

お風呂の中で1人、悶々とする。

 いや、アニメとか見る学生なら、これが正常で。

少しくらい期待しても、おかしくないでしょ?

アニメみたいなイベントに繋がらないかなー、とか?


(同意かぁ…神の信徒になる、ね…)


 敬虔なるとか言われても、無宗教な自分に思い当たる神はいないし、土地と言われても沖ノ鳥島みたいなサイズだったり、砂漠とかだったら笑えない。

 この手紙の差出人はこんなので人を集めようとしてるのか…


(でも、ま…)


ーーもし、仮にだけど。


(世界を統治…そんなことが本当にできるなら…)


ーー誓うよな、と。


そんな事を、思ってしまった。


その瞬間だった。



ーー目の前がブラックアウトしたのは。

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