兎と月
koh
第1話 兎サイド
兎は月に魅入られた。
その感情は憧れなのか、恋愛なのか兎には分からなかった。
だけど、兎の心にはいつも月が明るく照らされていた。
兎は神様にお願いした。
どうか、お月さまのおそばに居させて下さいと。
お月さまが俺に気づく事がなくても構いません、だからおそばに居させて下さいと。
神様は困った。
月に兎が行ける訳がないと。
仮に行けたとしても、大きさの違いから月が気づく事は無いだろうと。
神様は兎に問いかけた。
本当にそばにいるだけで良いのだなと。
そばに居るだけで、触れることすら出来なくても良いのだなと。
兎は即答した。
構いません、おそばに居られるだけで充分ですと。
神様は言った。
ならば、お主の心だけを月に送ってやろうと。
その心はお主次第で月に影を映すだろうと。
兎は喜んだ。
そして、一生懸命に考えた。
お月さまは何が好きかな…
人間達はお月さまに向かってお餅を供えてるからお餅が好きなのかな…
兎はお月さまの為に餅つきをする事にした。
来る日も来る日も
お月さまの事を想い餅をついた。
兎は集団で暮らしていた。
そして、自分で食べれない物を作るバカだと罵られていた。
でも、兎は気にもせずお月さまの事を想い餅をつき続けた。
ある満月の夜、兎はいつもの通りお月さまの事を想い餅をついていた。
その夜のお月さまには、ぼんやりと影が映っていた。
ぼんやりと映る影を見た兎は心が届いていると信じ、来る日も来る日もお月さまの事を想いながら餅をつき続けた。
満月の度、その影はだんだんと濃くなってきた。
そして、誰の目にもハッキリ見えるようになった。
兎はお月さまの事を想いながら餅をつき続けるうちに、自分がお月さまに魅入られているのが恋愛なのか憧れなのかが分かった。
兎はお月さまに恋をした。
叶わない恋だと分かっている。
そして、報われる事の無いものだと。
神様とも約束した。
触れることすら出来ないがそばに居たいと。
兎は心の中で叫んだ。
お月さまの事を愛しています。
たとえお月さまに触る事すら叶わなくとも、お月さまが気づいてくれなくても構いません。
俺はお月さまの事を思うだけで幸せですから。
兎は満月の度に月に映る影を見て幸せを感じる。
満月が明るく照らされているのは自分の想いが届いていると思ったから。
兎は願う。
いつまでもお月さまに影が映りますように。
そして、お月さまに自分の想いを受け入れてもらえます様にと。
そして、兎は誓う。
触れる事すら叶わなくとも、俺はお月さまを愛しています。
たとえ周りに罵倒されても、孤独になっても構わない。
俺はお月さまを愛しつづけます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます