自称探偵ハリー
たえこ
プロローグ
「残業代出ないんだから、残っても無駄だよ、ハリー」
先輩のマイさんはそう言うと、軽く手を振りドアの向こうへと消えていった。
やれやれ・・・。これが本業だったら、本当に残業代を請求したいところだ。
僕は、軽くため息をつくと、アイスティーを軽く口に含んだ。時間まで、あと1時間。誰もいなくなったオフィスで、僕は、A4サイズの茶封筒から資料を取り出した。
僕のあだ名はハリー。本名は非公開。
僕には、誰にも言っていない「副業」がある。言えないのではない。あえて、言っていないのだ。でも、あなただけには教えよう。
笑わないでください。僕の副業は、探偵です。
といっても、難事件を難なく解決するとか、世界的な怪盗や犯罪集団と頭脳戦を繰り広げるといったようなことはしていません。
街角の広告にあるような浮気調査、素行調査ということもやりません。
「○○ちゃんが自分のことを好きかどうか調べてほしい」、「合コンで知り合った男性の勤め先が、もらった名刺と同じ会社かどうかを調べてほしい」といった、名探偵が絶対受けない依頼を引き受けるのが、僕の仕事です。
ドラマや小説に出てくる探偵とは仕事の内容は違いますが、酒を愛し美しい女性を愛するという点は名探偵と共通していると思っています。
昼間は小さな会社で働いているこの僕が、職場を離れると探偵の顔になることを、社内の誰も知りません。
ですから、このことは、内緒にしておいてください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます