偽造だぞう
「あのね、この書類が偽物だって言われたんだけど、どういうこと?納得いかないんだけど」
30代らしき日本人男性が、書類をポンポンと指差して、私を睨みました。その書類は、フィリピン人女性が提出した英語の書類でした。
担当が私に、事情を説明しました。
「この書類は、フィリピンにいる彼女の両親が、この男性との結婚を認めているという文書だ。フィリピン外務省の認証を受けたものだと彼女は言ったけど、その認証証明書が本物じゃない。だから、両親が作ったという結婚承諾書も、本物じゃないと思う」
書類を提出したフィリピン人女性は、担当と私のやり取りを聞くと、反論するどころか、私に背を向けてしまいました。
フィリピンでは、25歳以下の男女が結婚する際には、父母からの同意や承諾が必要です。日本でも、婚姻できる年齢に達していても、未成年の場合は、父母の同意が求められますね。親の同意がないと結婚できない年齢があるというのは、日本もフィリピンも同じです。
親がフィリピンに住んでいると虚偽の申告をし、親が作成したという偽物の同意書や承諾書を提出して、日本で婚姻届を出す悪い輩がいます。
今回の書類は、フィリピン外務省認証証明書をカラーコピーで印刷した偽造でした。
担当と私が話をしている間、日本人男性は、カウンターを軽く叩きながら、私を睨んでました。話を終えた私が男性に話しかけようとすると、男性は軽く舌打ちをしました。
「あのさ。この書類、全部、彼女の友達が作ったから、ホンモノなんだって。どこが、偽物か、言ってみろよ!」
(@o@)!!!
男性の突然の自白に驚く私。
男性は、自分の発言に気づいていない様子。私は平静を装い、答えました。
「書類そのものが、偽造です」
フィリピン外務省の認証証明書を含めて全部、フィリピン人女性の友達が作ったから、偽造書類なんですよ。
「だからさ、この書類のどこが、どの辺が偽物なんだよ」
真実を話していることに気がつかないのか、開き直りなのか、偽造書類の根拠を問いただす男性。
「外務省認証証明書が偽造なんです。えーっと、青い紙に赤いリボンがついていますね。よく見てください。赤いリボンが二重にかかっているように見えますが、赤いリボンの絵の上に、赤いリボンを貼り付けています。おそらく、カラーコピーしたフィリピンの外務省の認証の台紙の上に、市販の赤いリボンを貼ったのだと思われます。この証明書、お友達が作ったとおっしゃいましたね。お友達はフィリピン外務省の方ですか?・・・違う。ということで、この外務省認証は、偽物なんですね」
「ほお!」
「フィリピン外務省認証証明書が偽物ということは、フィリピン外務省で、この書類が本物ですよという手続きが行われていないことになります。ですから、お友達が作られたという、結婚の承諾書も、偽物じゃないかと、担当が言ってます」
「ほお!なるほどね」
返事をするものの、男性は私の説明を全く理解していないように見えました。
「わーった!書類作った会社に、偽物かどうか、確認してみるわ」
書類作ったの、友達じゃないんだ(o_o)
男性は最後まで自爆したまま、「書類偽造なんて、オレは知らねーよ」という態度を貫き通しました。
友達という名前の書類を作った会社に、書類が本物かどうかを確認してみてくださいm(__)m
泣き出したフィリピン人女性の肩を軽く抱き寄せた男性。突然、担当と私に怒鳴りました。
「ここへ、4回も来てんだ!その度に、偽造、偽造って言われてよっ!オメーラ、いい加減にしろっ!」
エエェェ(ノ゜O゜)ノェェエエ
そんなに何度も「偽造書類だ」って言われていたんですかぁ?
肩で風切りながら退場する男性を、ほかのお客様は、同情の眼差しで見送っていました。
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