メガネを好きになれない私

ペペロン太郎

第1話

私は眼鏡をかけるのが好きではない。正確にいうと嫌いだ。


私・由紀子がメガネをかける様になったのは、小学生に上がりたての頃だったと思う。記憶というものは曖昧であるため正確な時期は覚えていない。


それでも小学生の頃からメガネをかけ始めたということには変わりない。


メガネをかける様になった理由は単純に、視力が弱いからだ。


小学生なのにも関わらず、先生が黒板に書いた文字がよく見えなくなってきており、それを先生と母親に相談したところ、私はメガネをつけることを勧められた。


私は身長が低い上にルックスにも恵まれていなかった。


なのでメガネをかけることによって、自分がさらにブサイクになった様な気持ちにさえ思えてくる。


(あの子のようにはなれないのか)


ふと、教室で友達とワイあいあいとした感じで楽しそうに喋る同級生の女の子の姿が蘇る。


くりっとした瞳にふわふわのブロンドヘア。毎日おしゃれな服装を着ている明るい彼女は私の憧れの女の子だった。


彼女は私以外の女の子に対しても、誰に対してもとても優しい。


私は彼女の様にかわいっくて綺麗で明るい素敵な女の子になりたいと何回も願っていた。


もちろん彼女は私とは違ってメガネをかけていない。


(どうして私は彼女の様に可愛くなれないのだろう?)


小学生の頃の私は、大好きな推理小説を読みながらそんなことを考えていたと思う。


---


中学生になった私はメガネを外してコンタクトにしていた。


理由は、彼女の様に可愛くなりたいからだ。


当然だが、メガネを外しただけでは可愛くなれるはずもない。


私は元々のルックスが良いわけではないので、メガネがあろうがなかろうがブサイクなままだった。


一方で中学に上がり、セーラー服に身を包んだ彼女は以前よりも可愛さが増していた。


中学生になったことにより、元からあった活発さがさらに増しており元気いっぱいだった。


そんな明るい彼女を見ていると、私も幸せになれるしずっとそばにいたいと思えてくる。


この頃だっただろうか、私が彼女に積極的に接するの様なったのは。


中学生の頃の私は、小学生の頃よりも彼女と一緒にいる時間が増えていた。


一緒に学校の委員会を行ったり、林間学校で一緒にカレーをつくたり、修学旅行で奈良の大仏を見たり、、、。


彼女と一緒に忘れなれない様な思い出をたくさん作ったと思う。


だけど私とコンタクトレンズの相性はとても悪かった様だ。


コンタクトレンズは目に直接レンズを入れるという関係上、装着しているとどうしても違和感を感じてしまう。


なんだか、自分の目を通して彼女の姿を見ているのに、何者かに邪魔されてじっくり見えない様な、そんな気持ち悪さが存在している様な気分になっていた。


---


高校1年生。花のJKになった現在の私は、メガネを装着している。


正確にいうと、コンタクトレンズを装着するのを忘れてしまい、仕方がなく小学生の頃に使っていたメガネを取り出して使っているのだ。


およそ3年ぶりに装着することもあり、レンズが合っているのかどうか不安になった。


だが装着してみると、若干度が弱いと感じるが、それでもしっかりと目の前の景色を見ることができると実感できる。


その上、コンタクトレンズを装着している時の様な違和感を感じることがない。


(やっぱり私にはメガネがお似合いか)


一時期は彼女の様にかわいい女の子に憧れて、メガネをつけるのをやめてしまった。


だけどメガネをつけても外しても、私はそんなに可愛くないため、可憐な女の子になるという夢を叶えることができなかった。


歩きながら、スマートフォンのインカメラを起動して、自分の髪型が崩れていないか確認する。メガネを忘れたからと言って最低限のお洒落はしておきたい。


久しぶりにメガネを装着した自分の姿を見ていると「やっぱり自分にはメガネがお似合いだな」と思えてきた。


「おーい!」


教室に着くと、彼女が大きく手を振りながら声をかけてくれた。なんや感やで彼女の明るさには元気付けられる。


「あ!メガネつけているんだ!懐かしい〜小学生以来かなぁ」


彼女が今日の私の変化に対してコメントしてくれた。これは可愛くなれない私の象徴なので、できればそっとしておいて欲しかったのだが、仕方ない。


「やっぱり、由紀子はメガネかけているとかわいいよ〜なんか小動物みたいで抱きつきたくなっちゃう!」


そう言って彼女は私に飛びかかり抱きついてきた。


高校生になった彼女は、小学生の頃よりも中学生の頃よりも元気いっぱい。


非力な私はそのエネルギーを受け止めることができなく、床に倒れてしまう。


メガネをつけている私でも、可愛くなれない私でも好きになってくれる、そんな彼女が好きだ。


これからの人生でも私は、元気いっぱいな彼女に助けられるだろう。


メガネ越しに見る、彼女の笑顔はいつもよりも鮮明に見えて、100倍ぐらい可愛く見えた。

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