好感度0から始めるヲタク男子のオトし方

葉月琴葉

Step1 HR

「えー、西ヶ丘二中から降臨し、芦川だ、ヨロヨロしくなのだ」

 退屈なギャグを入れてくる厨二な奴の自己紹介は さておき。

 入学早々の自己紹介という名のHR。

 

(早く終わらせたい…私の番はまだかしら)

 そんなこと思っていた時だった。


 「えと、西ヶ丘第一中学校から来ました、小谷瀬こやせです。好きなものはアニメや漫画、見ての通り冴えないヲタクです、宜しく」

 彼は小さくお辞儀を済ませ席に着いた。


 (え?ヲタク?同じくアニメ好きとしてお近づきになりたいな)


 「あ、それと僕、現実リアルの女性なんて興味ないんで」  

 彼は思い出したかのように、淡々と皆にそう伝えた。


 (仲良くなりたいけど、現実リアル女に興味ないんじゃなぁ、話し掛け難いな)


 (あ、でも、私もアニメ好きといえば同種として見てくれるかも)

 そう思ったときだった。


 「芹沢、お前の番だぞ」

 先生は私にそう伝え、自己紹介を促す。


 「え、あ、そうだ、西ヶ丘二中から来ました、芹沢 葵です、好きなものはパンケーキとタピオカ、あと可愛いもの(アニメの女の子とか)」 

 (さあ、遠回しにアニメ好きって言ってあげたわよ、さぁ彼の反応は…)


 「…」

 

(無反応かよ!)

 

 「芹沢ちゃんだっけ?」 

 私が席に着くや否や誰かが話しかけてきた。

(ん?男の声、早速話しかけてキター!)


 「うん♡なに?」

 振り返りざまに家出必死に練習したカワボを出してみる。


 「え、芹沢ちゃん?」

 少し不思議そうな顔をしているのは、芦川だった。

 (何だよぉぉぉぉ、お前かよぉおおおおお!!)


 「で、何?」

 自分でも対応が冷たくなったのが分かった。


 「芹沢ちゃんって彼氏いるの?」

 芦川は頬を掻きながら私に問いかけてくる。

 

 「(二次元に)いるよ」

 私はちゃんと伝えたぞ、伝わらない方が悪い、うん悪い。


 「そっか…」 

 声色から分かるに、かなり芦川は落ち込んでしまったようだ。


 それもその筈、芹沢は中学校時代、学年一の美少女で、彼女に告白する男子が多かったものの、彼女はその全て断っていたのだ。

 そう芹沢はアニメ好きのヲタクで、もし誰かと付き合うなら同種が良いと思っていたのだ。


(もういい自分から話しかけるぞ!)

「えっと、小谷瀬君?」


「ん?何?」

 小谷瀬は小首を傾げている。


「小谷瀬君ってアニメ好きだって言ったけど、どんなアニメが好きなの?」


「そうだなぁ…日常系のふわふわした感じかな?」

 小谷瀬は少し嬉しそうに答えた。


「分かるぅ!ホントふわふわ系は最の高だよね!」

(必殺!芹沢スマイリング!これでオチない男子は居ない、さぁ堕落しやがれ)


「うん、そうだね」


「…」


「…」


(それだけぇえええええええ)


「えっと、うん、また話そうね」

 また会話がしたいので、次回話すフラグを立てておこう。


「え、あ、うん、いいよ」

 彼は少し照れ混じりした顔をして、そう応えた。多分、女の子慣れしてないのだろう。


(ぐへへ、小谷瀬君とまた話したいなぁ。あれ?私、恋する乙女みたくなってる?)


「はい、自己紹介終了!休み時間にしていいぞ」

 いつの間に自己紹介は終わっていた。


 (さぁ、休み時間だし、小谷瀬君と話すぞ~)

 

 「小谷せ…」

 そこまで言いかけた時、別の誰かが声を掛けてきた。

 

 「ねぇねぇ、あお~今日帰りにタピらない?」

 この声は、同じ中学校だった村田ちゃん、どうやらタピオカミルクティーを飲みに行きたいようだ。


 「ごめん、今日は用事が」

 勿論もちろん用事なんて無いのだけれど、もしかしたら小谷瀬君が話かけて来るかもしれないので寄り道なんかできない。


 「そっか、また今度ね」

 少し残念そうに村田の姿は可哀想だが、仕方ない。


 そこから帰りのHRを行い、いよいよ待ちに待った放課後がやって来た。


 (さぁ、『じゃあね』でも『バイバイ』でも良いから話し掛けに来なさい)


「…」

 彼は即座に教室の出口へと向かっている。


 (なんで話し掛けてこないのよぉぉぉぉぉ)


 step1 HR 終了




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