S4.1 人間性を失うもの 2月9日

――光綿市 光綿支部紅葉――


帯刀「そうそう、瀬川さん!取り敢えず全員死なない程度にボコってきましたよ!」

瀬川「えぇ……。特訓とはいえ、首落としてないから死んでないっていうわけじゃないよね?」

帯刀「8割くらいは殺した!」

瀬川「うーん……」

帯刀「武士の情けじゃ……四肢は置いといたぜ……」

瀬川「手駒を減らすのはやめてくださいね。――ところで、無事ですか?」


▶周りにほぼ全員満身創痍で倒れていますね。治療術はかけられていますが、全身の痛みで立つのもままならない様子です


ハコベ「きゅー……」

稲生「――世界から色が……消えていく……がくり……」

宇佐木「zzzzzz……」

夕宙「寝て起きて治ってないんなら無事とは言えないんじゃないかなって……」

風鳴「命が残ってるのが無事だっつーんなら、その通りなんじゃねぇか……」

花園「足だけになってたよな?俺さっき足だけだったよな!?生きてるよな!?顔ついてるよな!?」

浅倉「もうやだ……死ぬのも死にそうになるのもやだよぉ……」

元木「――ふん」

十六夜「最近やっと慣れてきたので……大丈夫です、たぶん」

百瀬「そうですよ、私、辻斬りに突貫攻撃すること自体が間違ってました……。認めます……」

早乙女 「回復全然追いつかんって反則けぇ……」

帯刀「私の居合に斬れぬものなど、あんまり無い!――なんてね」

風鳴「しっかしいくら経験の差があるとは言え、夜叉ってのはこうも出来る出来ないが変わってくんだな」

百瀬「ぐぬぅ……相性もあるんでしょうけど…………」

瀬川「妄想にも種類と好みがあるからね。ただ、一芸特化でも極めればああなるだけかな……」

花園「やべーやべーと分かっちゃいたがイカれてんな」

帯刀「ミストファイナー」

夕宙「ヘーイ」

瀬川「本部には内緒だが、君たちにはこれをあげよう。僕の周りだとわざマシンって言ってたものだよ」


▶と言って、トランプのようなものを渡してきますね。紙切れで何も書かれていません


十六夜「これって……、トランプですけど?」

宇佐木「技は~4つ以上覚えられないので~~」

夕宙「1回使うとなくなるのはいまじゃヴィンテージらしいですよ」

百瀬「――そのマシン、実は使ったら消えませんかね……」

瀬川「スペルカードとか、クロウカードとか、バトルチップとかみんな好きに呼んでるよ。これを枕の下に置いて、こういうことしたいなーと思い浮かべると覚える代わりに消えるものだ」

夕宙「それ朝にはコインに変わってたりしません?」

百瀬「もし夜襲にあったらトランプが消えて覚えられないみたいなことはないですよね……」

瀬川「ただ、脳への負担が大きいんだ。2徹して資格勉強を一夜漬けして免許を取るような感じをイメージするといい。慣れないと死ぬほどきついんだ。最悪人間性が壊れるから、紅葉だと麻薬の扱いを受けている」

花園「ああ、そりゃ困る……」

夕宙「これで僕らも共犯かあ……」

早乙女「そんなん怖ーて使いたくないわー」

帯刀「一気に5つくらい置いたら楽しくなってくるよ!」

浅倉「強くなれるけど、死ぬほどつらい……」

宇佐木「寝るときは~頭を~休めるものなんですよ~~~」

十六夜「でも、慣れるものなんだったら一度慣れてさえしまえば……」

百瀬「まあ?――それで、さっきのひどい目に遭うこともなく強くなれるなら嬉しいですが……」

風鳴「ほー。んじゃまたなんでそんなもんを今渡すんだ?それこそ内緒にしなきゃなんねぇもんなんだろ?」

瀬川「正直言って君たちは弱い。現役当時の僕でも片手で倒せる程だ。夜叉の班図で見ると、ここは最前線までは行かないがかなり前線になっているんだよ。手駒を減らすのはこちらとしても避けたい」

瀬川「このカード程度で人間性失って失う手駒なら、そもそも最初からいないものとして扱うほうがこちらとしても戦力計算が楽なんだ。――わかってくれるね」

早乙女 「さっきそこのお姉さんに減らされかけたけぇ言っていることとやっていることが一致してないやんー」

元木「強くなるためにはそれなりの労力を払う必要があるもんだろが……。楽して強くなろうなんざガキの発想だろ……」

夕宙「寝てるだけっていうのは十分楽だと思うけどなあ」


▶帯刀はくるくると回って、刀を抜き、鞘に収めます。そして、溜息を付きますね


帯刀「私より強いのもいっぱいいるからなぁ……。――ここだって、大物は英雄さん達がいっぱい薙ぎ払ってるだけなんだよ?」

百瀬「たしかにそうですね……。だから私達を特訓させたんですか……?――耐えられるか見るために」

帯刀「いや?私のトレーニング相手になったらいいなーって。1回しか刀抜けなかったけど」

夕宙「力……及ばず……」

花園「こんなやべーやつにお試しされたら大概死ぬんじゃねーのかね」

瀬川「帯刀くんは置いておいて、このわざマシン。時限製でね。妖精が作ったもので、時間が経つと消えるから出来れば早めに使ってくれ。5日程しか持たないから、次の日休みの日に頭に入れてくれ」

帯刀「いらないならちょーだいね」

花園「週末は忙しいからな、今日にでも使っておくか。――なんせ週末はウチの可愛い可愛い妹が俺の為にチョコを用意してくれてるからなぁ!今から楽しみで死ぬわけにはいかねえってもんだ!ハッハッハァ!」

百瀬「そうだった……チョコ作らないとなー」

風鳴「それにしても妖精……、ね。いっそ俺にもそういうのがありゃあ……ってのは無い物ねだりか。――しかしいざ考えると思ったより固まらねぇもんだな」

元木「大丈夫っすよ……俺らは選ばれた側の人間っす……何の心配もいらねっすよ……」

百瀬「とにかく……。これでまた強くなって……、いずれは帯刀さんを返り討ちにできるくらいまでになりたいものです……」

十六夜 「どうつらいのかもやってみないとわからないし……、どういう力がいいかなぁ」

早乙女「これって戦うための力……しか手に入らないんけ?――戦うためとかよりこうケガしないようにーとか風邪引かなくなるーとかそういう超能力?特殊能力?みたいなのとかはダメなん?」

瀬川「そういう超能力を持った人間は現実にいると思うかい?概念を適用しても人間は人間でしかないんだよ。――――僕も人間じゃなければ、前線で散れていたんだろうね」

早乙女「やっぱそういうのは漫画の話だけかー。何かあるんかなー」

浅倉「みんな、明るいなぁ……はぁ、切り替えなきゃだよね。こんなんじゃ使って廃人になっちゃうよね。うん、きっと私は大丈夫……今だってこうやって生きてるんだ」

元木「キーキーピーピーいうような精神の奴じゃあどうだか怪しいけどな……」

稲生「でもなるほど……。これがあれば不死鳥さんをもっと強くすることとかも出来るのかな」

夕宙「――とはいえ、漫画みたいなことしてるんも事実だし、案外やってみたらできた!ってこともあるかもっすね」

早乙女「そっか。コウくんポジティブやん!できるかどうかより試してみるのもいいか」

風鳴「だな。出来るものか?なんて思い浮かぶってことは自分に必要なものだっつーことだろ。景気良く行こうぜ、人間らしくな」

宇佐木「英雄様もやってるなら~何も気にする必要は~ないですね~~」

瀬川「英雄と呼ばれてる人でもやってない人もたくさんいるけどね。あくまで人間である自覚を薄くして、力の代わりに人間として、ここだと日本人の常識をなくすものなんだ……。帯刀くんも昔は……」

帯刀「とにかく、みんなも毎日夢の御札、使おう!毎日楽しいよ!」

瀬川「帯刀くん、そんなに勧めないでくれ……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る