声劇台本2人用 「朝の出来事」

コペル

「朝の出来事」

A:男性


B:女性




A:少し肌寒い、冬の日の朝…頭上から、けたたましく鳴り響く、ベルの音に起こされるが、布団が恋しいこの季節…そうやすやすと起き上がれはしない……眠い目をこすり、まだ時間に余裕があるからと、気を抜くと……ほら…またいつもの慌ただしい時間…


B:……なーにを、寝坊した事を優雅に喋ってんの!?じゃあ何か?

いつまでも、起きて来ない貴方を心配して、「コン、コン、コン」と三度ドアを叩き、ゆっくりと開け、すやすやと眠る…貴方の横顔にホッと、少し安堵しつつ…時計の針とにらめっこして、優しく身体を揺らしていく…

とか言ったらえぇんか!?


A:そんなに朝から声出さないで…でも…怒った顔も…可愛い?可愛い…よ?


B:なんでそこ、ハッキリと言わへんのかな?疑問系にすなっ!


A:ごめん、ごめん…大丈夫、そなたは…たくましい…


B:美しいって言えよ…美しいって言えよー!


A:プッ…あはははは


B:ハイハイ!バカやってないで、さっさと用意してらっしゃい、ホントに遅刻しちゃうし…それに、ご飯冷めちゃうよ?


A:はーい!ちなみに今日は、なに?


B:それは、見てのお楽しみ~♪


A:急いで顔洗って来まーす!


B:ふぅ…このごくごく平凡な、毎朝のやり取りが、いつまでも続くんだと…私は…何も疑う事無く、信じていた…あの事が起きるまでは…


A:え?なにそれ(笑)俺死んじゃうの?(笑)


B:いや、なんとなく…こんな感じで、匂わせる事も出来るよねぇーって(笑


A:なんの実験してんねん!(笑


B:そう、これが…あの人の…最後の笑顔になるなんて…この時の私は…


A:だから勝手に殺すなって!え?シリアスにしたいの?(笑


B:ごめんごめん(笑)そんなつもりじゃないんだけど…


A:…ったく…あ、言い忘れてたけど、こいつと俺は、恋人とかじゃないぜ!まぁ確かに…小さい頃から家が隣で、事あるごとに絡んで来るし…切っても切れない腐れ縁…みたいなもんだったんだが…それを見かねてか、お互いの両親が勝手に「いいなずけ」にしたから、さぁ大変!こいつと結婚とか…確かに顔は可愛いけど…


B:あの~?いつから幼馴染になったんですか?(笑)しかも!ゴリゴリのラブコメって(笑


A:さすがに、ベタすぎたか(笑


B:無理ありすぎ(笑)出会ったの大学の時だし、それより…用意は?


A:大丈夫!ちゃんと出来てるよ!


B:ズボン履いてからじゃないと、説得力ないなぁ…見てるだけで寒いんだけど?


A:…はい……あっ!


B:え…何よ?


A:食卓に並んでいるのは、ほんの少し焦げたトーストに、綺麗な黄金色(こがねいろ)したスクランブルエッグ、それに焼き色の付いたソーセージが、お皿の上を鮮やかに彩って(いろどって)いる…その隣には、さっき淹れたばかりだと分かる、白い湯気がほのかに立ち昇り、深みのある香り漂う珈琲が用意されていた…


B:あのー…素敵に表現してくれるのは、スッゴい嬉しいんだけど…さっさと食べないと…遅れるよ?(笑


A:良いかい?時間なんて物は、誰かが作った概念でしかないんだ…しかも「ヒト」の身体は1日、25時間周期で動いているのに「グレゴリオ暦」のせいで、1日24時間、1年12ヶ月、毎月毎月バラバラで統一性の無い、1ヶ月の周期になっているが…本当は1年13ヶ月の、1ヶ月28日が妥当なのに…


B:朝からうるさい!食べるの?食べないの?お弁当は?


A:頂きます!持って行きます!


B:よろしい!……こんなうんちくを、毎朝毎朝聞かされて、うんざりするか?って…それは勿論!でも彼の何気ないひと言から、世紀の大発明とも言える「タイムマシン」が、まさか出来るなんて…それに、彼を巡ってこれから世界を揺るがす、大きな大きな物語が始まるなんて……


A:SFなの!?これから、「サイエンスフィクション」になるの!?


B:どうかなぁー?(笑)…どう?美味しい?私のスペシャルブレンド!


A:うん…すごく美味しい!苦味が深くて酸味が少ないから、すごい飲みやすい!


B:そう言って彼はマグカップの中身を、キレイに飲み干した……何が入ってるかも聞かずに、呑気に美味しい、美味しいと…


A:ちょっと待て!「ホラー」なのか、「サスペンス」なのか、はたまた「ミステリー」なのか…その導入は悩むぞ!(笑


B:さぁ…貴方はどのストーリーがお好み?


A:じゃあ…「アクション」か「ファンタジー」で!


B:ここから!?選択肢以外のモノ、持って来ないでよ(笑


A:じゃあ、帰って来るまでに作ってて!


B:無茶ブリはやめてよー!


A:って、もうこんな時間!?やっべ…行ってきます!


B:はーい!行ってらっしゃい


A:…


B:あっ…お弁当……彼が忘れて行った、このお弁当の中身を…きっと、彼は死ぬまで知らないんだ…私が作った…私だけの…彼への想いは…いつまでも届かずに、ずっとずっと…何も変わらず、明日がやって来る…


A:ごっめーーん!お弁当忘れてた!


B:バーカ(笑)


fin
















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声劇台本2人用 「朝の出来事」 コペル @gadomoroha

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