LIFE CRYSTAL
ピザくん
第1話 失う
それが起きたのは10月4日の真っ暗な深夜のことだった…。
突然、大地震というには小さく弱い地震というには強い不気味な揺れが起きた。
※ ※ ※
ふと目が覚めたのは、黒くて少し癖っ毛のある髪型をしている普通の男子高校生、野田 健也(のだ けんや)だ。
「はい、ここを…健也っ、答えてみろ。」
と、言うこの人は健也のクラスの担任教師、松田先生、男の先生だ。先生はわざと寝ていたと知っていて言ってきた。そう思いながら健也は
「すみません、一ヶ月後のテストのために頭休めてました…」
と、答えた。すると、呆れたように先生は言った。
「一ヶ月後のテストって、休むの早すぎだろ。今度はちゃんと話聞けよ!」
クラスのみんなが小馬鹿にしたようにクスクスと笑いだした。少しイライラした健也は、先生が黒板を向いた途端に中指を立てた。
すると、チャイムの音が鳴り響く。昼飯の時間だ。健也はいつも1人、自分の机で弁当をたべている。今日もそうだ。すると、周りからこんな声が聞こえた。
「昨日の地震気づいた?」
「あっ、気づいた、気づいた!まぁまぁ大きい揺れだったね!」
(そういえば、あったなそんな揺れ。まぁ、ここは、普通に地震多いからな〜)
しかし、そう思いながらも健也は少し違和感を感じていた。
そのまま、いつも通り5時間目の科学と6時間目の英語が終わり、家に帰ろうとしていた。なんせ健也は帰宅部のエース!!帰るのは人一倍早い。
健也の学校から家まではあまり遠くない、というか近い。だから、いつも走って家に帰りゲームをする。しかし、今日は違った。家と学校の丁度半ばでなんらかの事件があったらしく、警察が現場を囲んでいた。つい健也も走っていた足を止めてしまった。
「何があったんですか?」
近くにいた、60代ぐらいの女の人に話しかけた。するとその人は、
「殺人事件ですって。怖いわね〜」
と、不安げに言った。
「えっ、殺人事件⁈本当ですか?」
「ええ、本当よ。もっと前に行って少し見てみたら?痛々しかったわよ。」
そう言われて、
「すみません、ちょっ、よけてもらえますか?」
健也は必死に人を掻き分けその現場を見た。興味本位だろう。だか、ブルーシートであまり中が見えない。回り込み立ち入り禁止ギリギリのラインから覗いた。すると、目の前には、ナイフに刺されたでもなく、銃で撃たれたでもないような…。まるで、何かの噛み跡のようなものが首のうなじ辺りにあった。
「うわっ、グロッキー」
そう、口ずさみ、目に焼き付けないようにと家に走って帰った。しかし、もう遅かった。頭の中から離れない。
「だだいまー」
靴を脱いで家にはいる。家は狭いアパートだ。
「お帰り」
返事をしてくれたのは健也の母だ。健也の母は、健也が物心つく前に父と離婚をし、それ以来女手一つでバイトとパートをしながら健也を育ててきた。健也はそんな母が好きだ。
「今日は学校どうだったの?」
夕飯の料理をしながら、いつも聞いてくる。
「いつも通り。」
お決まりの返事をした後、ぐーたらして夕飯を待つ。 その間も、あの姿は忘れられない。
「ご飯よ〜」
そう母に言われたとき、ハッと考えるのをやめ、
「はいはい」
と、返事した。食事中は、テレビを見ていた。母にはあの事件のことは話さなかった。というか、明日にはその話は母の耳に届いているだろう。そう思った健也は早く夕飯を食べ、風呂に浸からずシャワーだけ浴びて寝た。
寝ている時もモヤモヤというかイガイガというか…。よく分からない感じがした。あの人がかわいそうだと思ったのか。または、単に傷跡を不思議に思ったのか。はたまた、その他か。健也には分からなかった。
※ ※ ※
健也が熟睡し、何分か経った頃、窓ガラスが割れた。そして、赤く光る、まるで水晶のような宝石が不気味なオーラを纏い寝ている健也に近づく。健也は気づいていない。
「仕方ない、いや、丁度いいのまちがえか?よし、こいつにしよう。」
そう言葉を発した謎の物体は健也の心臓部に入り込んだ。
「ウゥ、ンゥ」
健也はうなされるだけで起きない。
※ ※ ※
朝、健也が違和感を感じながら起きた。そこは寝ていたベットではなく、母の部屋だった。
「あれ?なんでここにいんの?俺。」
不思議に思った。ふと手元を見ると、手も服もズボンにも血が付いていた。
そして気づいた。手足が自由に動かなくっていることを、床に母が死んでいることを…。
「ウワヮァァァァ!!おい、母さん!起きろよ!」
自由に動かないはずの手が母の手に行く。
「やっと動いた!」
(いや、これ、俺が動かしてんのか?)
そう思った途端、母の腕に手が行き腕を引きちぎった。健也は、恐怖を感じその時言葉が出なかった。そのまま、その手を口元に運んだ。いや、運ばれた。
「腕は美味そうだ。」
そう、頭の中で何かが言う。そして、そのまま口に運ぼうとする。
「今のは?誰?いやだ、食べたくない。」
「いやだ!いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだーーーー!」
必死に操られる体を抵抗するが、口に入れ飲み込んだ。
「ウォェッ」
吐き気がするが吐けない。そして、次から次えともサボり食う。
「もうやめて、食べたくない…。」
すると、
「お前は今実の母を食っているんだぞ!俺に操られて何もできない。情けないと思わないか?」
そう、何かが囁く。すると、健也がつぶやいた、
「本当に情けねーよ…。俺は今実の母を食っている。それを止められない。何もできない。」
(もう落ちたな。)そう頭でつぶやく何かが思ったとたん、健也が強く発した。
「諦めるな!この体は俺のものだ!誰のものでもない、母さんからもらった大切な体なんだ!」
「動け!動け!動け!動け!動けーーーーーーーー!」
何度目自分に言い聞かせた。
(なんだ⁈こいつ意識を戻しやがった!)
「ウォォォォォーーーーーーーーーーー!」
強く叫んだ健也は、手に持っていた母の肉をはなし、まるで全身の神経が繋がったかのように強く動いた。
To Be Continued.
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