第10話 欲求不満解消

さて、サリューも来た事だし、何の心配なく遊べるぞー!

あまり無茶しないようにと、お達しが来たようだけど、大丈夫だよ。

だってこっちにはサリューがいるんだぜ。


「サリュー、俺もう限界。

狩に行こう。何処でもいいからさ。

何だったら屍の森でもいいよ。」


「紗月、何言ってるんだ?

そんな所でいきなり体に変化が起こったらどうするつもりだ。

素直に死に戻れるならいい、だが今のお前にはその保証はないんだよ!」


リアルでそのまま心臓が止まったらどうするつもりだ、

とサリューに怒られました。

それでも欲求不満の俺は、近くで我慢するから狩りに行こうと食い下がり、

ようやくサリューと一緒に、深淵の森に行く事になった。

サリューは、本当は俺に部屋で大人しくしていてほしいみたいだが、

とにかく俺は、欲求不満で爆発しそうなんだ!

そんな俺の我儘を聞いてくれるサリューって、やっぱりいい奴だよな。


深淵の森は、主に中級者がレベル上げをするクラスの森だ。


「さってと、サーチ。」


森に着いた俺はさっそく魔物を探す。


「サリュー、西北西約1キロに中型クラスの奴発見。」


「OK、無理するなよ。何か有ったら私を盾にして逃げろ。

紗月は死に戻りを当てにするな。」


分かったって。

そして俺たちは全速力で走った。

久しぶりの狩りだ、気持ちいい~~。

そして見つけた奴は、A級に匹敵する魔物、ガロンドサイルだった。

特徴的に言ったら、火を吐く首長竜て感じの奴。

やった!大当たりだね。久しぶりでワクワクする。

しかしサリューの顔を見ると、苦虫を噛み潰したよう表情だった。


「チッ、いいか紗月絶対に、」


「分かってるよ、無理はしない。

それよりほら、来るよ。」


俺たちに気が付いたガロちゃんは、早々に攻撃を仕掛けてきた。

長くて太い尾を勢いよく俺に向けて振ってくる。


「当たるかよ!」


俺は己のバネを生かし、瞬時に飛び上がりそれをかわす。

そして降り際に、奴の頭に得意のネコパンチをお見舞いしてやった。

よし、きいてるきいてる。

奴は頭を振りながら目を回しているようだ。

その隙を付き、サリューが奴に切りかかっていく。

さすが騎士だけの事はある。縦横無尽に剣を振り回し、

奴のHPをサクサクと削っている。

やっぱりサリュー、かっこいいよなー。

おっと、見とれている場合じゃない。

せっかく来たんだ、俺もやるぞー!


「サリュー!」


その一言で、あいつは俺のやりたい事をすぐ理解してくれる。

サリューは敵の前なのに、ぐっと足を踏ん張る。

すかさず俺はジャンプし、サリューの背に足を着き、さらに高くジャンプした。

そして俺は奴の顔の正面に出た途端、爪を出し思いきり切り裂いた。

俺のバネや爪、ネコキャラは伊達じゃないのさ。

グギャア~~~!

俺の爪はモロ奴の目にヒットしたみたいだ。

しかし、致命傷には至らず、苦し紛れに首をやみくもに振り回しだした。

そして、ヒューッと息を吸う音。

まずい、火を吹く!このままだと、モロ俺にかぶっちゃう。


「紗月―――!」


飛び出してきたサリューが、ザンッ!と一気に剣を振り下ろし、奴の首を落とした。

首を無くしたガロンドサイルはズシンと地響きを立てながら、

地面と仲良しになった後、キラキラと消えていった。


「悪い、手間かけた。」


「いや、私がもっと気を付けるべきだった。」


サリューは顔色を少し悪くして、俺を抱きしめる。

これこれこれこれっ。

何かスキンシップ率高くなってませんかサリューさん。


「んー、常識?いや、我慢………。

ああ、自分に嘘つくのやめたんだ。」


???サリューノイッテイルコトバノイミガリカイデキマセン。

とにかく俺たちは、ガロンドサイルのお宝を回収することにした。


「結構な収穫があったな。さて、次の奴を探すか。」


まだまだやる気満々だよ俺は。


「もうダメだ、今日はこれで満足しろ。

私はお前にあまり危ない真似してほしくないんだ。」


「え~っ。」


ブー垂れるよ、俺。


「そんな顔するなって、通常に戻ったらいくらだって付き合ってやるから。」


「本当だな。言質取ったぞ。」


「取らなくても付き合うって。」


やっぱりサリューは最高だよな。


でも、サリューが那津と分かった時点で、

あの技(さらに高くジャンプするやつ。)は封印しようと思ったんだ。

だって、女の子を足蹴にするなんて、男として出来ないだろう?

だけどそれを那津に怒られた。

いくらリアルで女だからって、此処では男だ。

それなのに私の事を女扱いするのは、

私にとっての侮辱だ!てね。

まあ、今迄男同士として付き合ってたのに、

今更女の子扱いするのもどうかと思い、封印するのは止めたんだ。



「今日はこの後、客が来る予定なんだ。」


「そうなの?」

俺は次の獲物を狩る気だったんだけど、

何でも、運営からの人が来るそうで、

ゴッタニ亭で待ち合わせしてるんだって。


「いくら運営の人だからって、俺がいる間は放っておいていいからな。」


それは逆じゃないのか?

多分その人が居る間はデーターを取ったり、

いろいろしなくちゃならないだろうから、

逆にお前が邪魔するなよ。

俺は早くリアルに帰りたいんだ。

そんな事を思いながら、俺たちはゴッタニ亭に向かった。

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