セルジー

@ulue12

第一章

株式会社cellG(セルジー)


様々な細胞を研究し食物の栽培や医療研究に成功している大企業である。

この物語はその会社が秘密裏に行っていたある計画に基づく話である。


2032年12月

吐く息が白く手がかじかむ季節

『前村修平』は公安の仕事を黙々とこなしていた。


「修平!」


夜中の1時に眠気を吹き飛ばすほどの大きい声で呼ぶのは同僚の『佐伯健吾』だ。


「なんだ?」


大きな声には慣れていた。


「腹が減ったから出前でも取らねえか?」


「そんなことかよ...。まぁ報告書も一段落するし良いよ。」


少し鬱陶しそうに返す。


「やっぱ寿司か?」


ニヤけた顔の『佐伯』が無性に腹が立つ...


「いや、普通に丼でいい。」


「何でだよ!これ経費で落ちるだろ?たまには贅沢しようぜ!」


「それはそうだけど、あんま経費申請が多くなると『佐藤さん』の機嫌が悪くなるだろ。」


『佐藤さん』とは経理課の部長だ。


「あの人はそれが仕事なんだから良いじゃねえか。」


こうなると佐伯は一歩も引くことはない。


「......わかった。今日だけ。今日だけ寿司で。」


「よし!決まりだ!」


笑顔の佐伯が早速スマホを取り出し電話を始める。


「もしもし...はい。......はい。」

「えぇ...大トロ、アジ、穴子......」


意気揚々と寿司の出前を頼む佐伯の後ろで俺は残った報告書を完成させようとしていた。


少し緩んだ顔で軽快にタイピングをしていると、

注文が終わった佐伯が近寄る。


「例の汚職事件か?」


「あぁ。」


「それにしてもあの大企業でこんなことがあったとなればこれからドンドン新しい膿が出てきそうだけどな。」


「確かにな。」


「上の私利私欲のためだけに俺らの給料を支払わないなんて、どういことだ!」


佐伯が少し冗談混じりで吐いた。


「それがさ、私利私欲のためじゃ無いみたいだ。」


「そうなのか?じゃぁその支払ってなかった税金ははどこに行ったんだよ」


佐伯が珍しく全うな質問をしてきた。


「研究のための費用だったって話だよ。」


「でも、あそこの研究費は国から出てるだろうよ。」


「それ以上に金が必要だった研究をしてたんだろ。」


「頭のいいやつがやることは全くわかんねぇよ。」


「確かにな。」


そんな他愛ない話だったが確かに8億という未納の大金、ただの研究費に全て使われていたというのは疑問が残る。

しかし公安総動員で臨んだ今回の捜査では役員達には不審な金の動きはなかった。

その為全て研究費という会社の発言が通ったのだが...


ではそんな大金を費やして行っていた研究とはどんなものだったのか、前村は少し気になり始めた。


「お待たせしました!寿司正です!お寿司の出前をお持ちしました!」


「はいはーい!」


佐伯が取りに行く。


「有り難う御座いました!」


「来たぞ来たぞ!早速食べようぜ!」


「あぁ...」


「なんだよ、連れねえな!今はそんなこと忘れて美味い寿司を食おうぜ~!」


「あぁ、そうだな。」


研究費の謎を気にしながらも届いた特上の寿司を食べ始めた。


~第二章予告~


佐伯との他愛ない話で気になった汚職事件の研究費を調べることになった前村。

そこで辿り着く衝撃の事実とは。

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